2023 Fiscal Year Annual Research Report
Life history of the Japanese wood mice is affected by the occurrence of acorn masting: A new mechanism of population fluctuation
Project/Area Number |
23H02265
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
島田 卓哉 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中下 留美子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00457839)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | アカネズミ / 食性 / 成長曲線 / 堅果豊凶 / 安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
アカネズミの成長パターンと堅果豊凶との関連を解明するために,春生まれのアカネズミ個体について成長曲線解析を行った結果,堅果生産量の違いによって成長パターンに変異が生じることが判明した. 【目的】研究代表者らは,アカネズミ成長パターンがコナラ堅果の豊凶によって変化することを既に発見していたが,その結果を頑健なものにするために,新たなデータを加えて再度解析を実施した.また,堅果生産量の変動と連動してアカネズミの密度も変化するため,観察された成長パターン変異をもたらす要因が堅果生産量なのか密度なのかを検証する必要がある.そのため,岩手大学附属滝沢演習林のコナラ二次林において標識再捕獲調査を行い,成長曲線解析を実施した. 【方法】捕獲データのうち,初捕獲時体重が19g以下等の一定の基準を満たす個体について齢推定を行い,成長曲線パラメター(漸近体重A,成長変曲点I,成長率係数r)の推定を行った.これらパラメターと前年秋の堅果生産量および個体数密度指標(アカネズミ間の最近接間距離)との関係を解析し,成長曲線に違いが生じるプロセスを検証した. 【結果】2010年から2023年までに得られた32個体の春生まれ個体を解析対象とした.これまでの観察結果と同様に,堅果豊作翌年生まれの個体は,堅果不作翌年に比べ,成長変曲点が短く,漸近体重が軽くなる傾向が認められた.漸近体重および成長変曲点と前年秋の堅果生産量との間には一定の関係性が認められたが,アカネズミの個体数密度指標との関連は認められなかった.これは,観察された成長パターン変異(豊作翌年の早熟化)は,堅果豊作による餌環境の改善によるものであり,密度上昇による制約ではないことを示しており,堅果の豊凶に対するアカネズミ個体群の反応を理解する上で重要な発見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね計画通り進捗している.しかし,予測に反して堅果不作年が2年連続したため,豊作翌年のデータを取得するのが一年遅れることとなった.研究期間全体での進捗には大きな影響はないと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も現在の調査を継続し,安定同位体比分析による食性解析と血液学的・形態的指標による栄養状態評価を行い,堅果生産量との関係を評価する.これらのデータに基づいて,アカネズミの成長パターン変異をもたらすメカニズムの解明を目指す.
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