2023 Fiscal Year Annual Research Report
The amplification mechanism of bovine maternal immune tolerance for conce
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23H02356
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
宮本 明夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (10192767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今川 和彦 東海大学, 総合農学研究所, 特任教授 (00291956)
島田 昌之 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (20314742)
草間 和哉 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30579149)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 精子 / 受精卵 / TLR2 / 受胎 / ウシ |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシの受胎率底上げを導く免疫戦略として、精子と受精卵の自然免疫受容体TLR2活性化による母体の免疫寛容増幅機構について体系的に検証する。本企画は、「精子によって卵子と母体の自然免疫が活性化され、生存性に優れた受精卵が発育し、同時に子宮の免疫寛容が増強され受胎が成立する」という仮説を、①精子と子宮上皮、双方のTLR2で開始する自然免疫反応、②受精卵TLR2による発生促進機構、③初期胚ハッチング(透明帯脱出)直後の急激な自然免疫応答と母体免疫寛容誘導、について解明し、④受精卵TLR2活性化で得た初期胚盤胞を移植試験して受胎率改善戦略を示し、家畜生産性向上に寄与する目的でおこなう基礎的研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、精子によって卵子と母体の自然免疫が活性化され、生存性に優れた受精卵が発育し、同時に子宮の免疫寛容が増強され受胎が成立する」という大仮説を、①精子と子宮上皮、双方のTLR2で開始する自然免疫反応、②受精卵TLR2による発生促進機構、について検証した。 ①精子と子宮上皮、双方のTLR2で開始する自然免疫反応: 精子TLR2活性化はヒアルロン酸(HA)断片が接着因子として精子の子宮上皮結合を十分に維持して、精子と子宮上皮細胞のクロストークを可能とすることが明らかになった。さらに、精子の超活性化がTLR2刺激により誘導され、頭部振幅が大きい運動型の精子がより流体摩擦に打ち勝ち、子宮腺に侵入するグループであることを解明した。この精子群は卵管に向かわずに子宮での炎症誘導で迅速な子宮清浄化を促進し、受精に向けて卵管にたどり着く直線型運動性をもつ精子群を助ける(受精後の初期胚は5日後には清浄化された子宮に降りてくる!)と解釈できる。加えて、精子-子宮の相互作用におけるTLR2ヘテロダイマー形成が生み出す“弱い炎症応答”についてコンピューターシミュレーション(in-silico)解析を行い、精子センシングは、基本的に子宮上皮細胞のTLR2/TLR1ヘテロダイマー形成によるものであることがわかった。 ②受精卵TLR2による発生促進機構: 体外受精1.5日後の4細胞期受精卵に、TLR2アゴニスト(PAM)で受精卵の自然免疫システムを微弱に活性化し(TLR2は全てのステージで発現を確認済み)、予備試験から確証を得た7日目の初期胚盤胞への発生率増加メカニズムを調べた。その結果、TLR2活性化した受精卵は、オートファジーを含む代謝系、アポトーシス減少による生存性、IFNT産生能などを伴い発育促進され、胚盤胞の質が向上することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、以下の3つの戦略と1つの実証試験から構成される。 精子によって卵子と母体の自然免疫が活性化され、生存性に優れた受精卵が発育し、同時に子宮の免疫寛容が増強され受胎が成立する」という大仮説を、① 精子と子宮上皮、双方のTLR2で開始する自然免疫反応、② 受精卵TLR2による発生促進機構、③ 初期胚ハッチング(透明帯脱出)直後の急激な自然免疫応答と母体免疫寛容誘導、の詳細を解明し、④ 受精卵TLR2活性化で得た初期胚盤胞を移植試験することで受胎率改善戦略を示す。 ①精子と子宮上皮、双方のTLR2で開始する自然免疫反応: R6年度は、これら一連の子宮内での精子に起きる現象メカニズムが、実は、精子が排卵卵子に受精する際の「受性能獲得」に必須である「超活性化」と同様であることが考えられるので、子宮環境で超活性化を起こした精子が、体外受精系で本当により受精率・発生率が高い精子であるかについて検証する。これが裏付けられた場合、この方法による受精後の発生する受精卵の質の評価を胚ゲノム活性化機能も含めて観察を進める予定。 ②受精卵TLR2による発生促進機構: R5年度に、体外受精1.5日後の4細胞期受精卵に、TLR2アゴニスト(PAM)で受精卵の自然免疫システムを微弱に活性化し(TLR2は全てのステージで発現を確認済み)、予備試験から確証を得た7日目の初期胚盤胞への発生率増加メカニズムを調べた。特に、TLR2活性化した受精卵の発生能とTLR2機能の関係について、代謝系、生存性、IFNT産生能などを調べ、発育促進と作出した胚盤胞の質について新しい科学的基盤を得ることを進めたが、未だその検証は中途である。この一連の多面的な解析を完遂して、結論を得る予定。これが本研究企画の後半のハッチング直後の受精卵と子宮との複雑系のクロストーク検証の土台となる。
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Remarks |
講演タイトル「Innate immune system in the physiological process toward fertilization and embryo receptivity in the cow」 *牛の繁殖学において国際的に突出した研究実績を持つ研究者を2年毎に招待
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