2023 Fiscal Year Annual Research Report
For coexistence with Echinococcus - Re-evaluation of biological characteristics of Hokkaido-prevalent population based on the new findings
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23H02369
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野中 成晃 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (50281853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
孝口 裕一 北海道立衛生研究所, その他部局等, 主幹 (50435567)
中尾 亮 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (50633955)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 人獣共通感染症 / 対策 / 分子疫学 / 寄生虫 / 北海道 / エキノコックス / 多包条虫 / 集団遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道全域に広がり撲滅が困難となっている人獣共通寄生虫・エキノコックスについて、人への感染リスクを最小限に抑えながらこの寄生虫と共存するための基盤研究として、1)ミトコンドリアおよび核のゲノム情報を用いた遺伝子型別の開発、ならびに2)遺伝子型別の生物学的特性を比較解析するために遺伝子型別分離株の樹立とライブラリー化を目指した。 キツネに混合感染する複数の遺伝子型を網羅的に解析するため、複数のミトコンドリア遺伝子型を同時に検出できる高速遺伝子型別法を開発した。本法ならびに核遺伝子解析法(MIG-Seq法)を用いて、北海道が実施したキツネの定点調査から得られたキツネの腸管由来成虫群、および道東の独自調査で採取したキツネ糞便中の虫卵群の遺伝子情報を解析した。その結果、道東ではアメリカ・セントローレンス島由来であるミトコンドリア遺伝子型1と中国・四川省由来であるミトコンドリア遺伝子型2が混在し、単一のキツネ個体に異なるミトコンドリア遺伝子型が混合感染していることがわかった。さらに、核遺伝子の解析結果との照合から、道東ではトコンドリア遺伝子型1と2が交雑してハイブリッドを形成し、独自の遺伝的背景を持つ集団が形成されていることが明らかとなった。 そこで、道東の新しい集団がどのような生物学的特性を持つのかを検討するため、道東でキツネ糞便の採取を行い、糞便から虫卵を分離してマウスへ実験感染を行うことにより様々な遺伝子型の分離株樹立を試みた。今回、野外採取糞便の虫卵陽性率は25%、虫卵投与後のマウスでの感染成立率は67%であった。野外採取糞便中の虫卵の感染成立率の評価はこれまでに全く報告がないが、今回の実験により、非常に高い感染成立率であることがわかった。現在、12個のクローン分離を行っており、次年度に遺伝子型間の生物学的性状の比較解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に予定していた研究計画は、1)エキノコックス検体の収集、2)遺伝子解析、3)エキノコックス遺伝子型間の表現型比較、4)成果発表という4項目であった。 このうち、1)、2)、4)はおおむね計画通り順調に推移した。1)については、北海道立衛生研究所が行ったキツネのエキノコックス感染状況調査で得られた材料の提供を受けた。さらに、我々が独自の野外調査で収集したキツネ糞便も本実験に供した。本年度の遺伝子解析は方法論開発に重点を置いたので、これらの材料のみで十分に研究開発が可能であると判断し、他の材料入手については調整のみを行った。2)については、複数のターゲット遺伝子領域を同時に増幅させて解析するdeep amplicon sequencing法をベースにして、複数のミトコンドリアハプロタイプを同時に検出できる方法を開発した。さらに、本法と、核ゲノムのゲノムワイドSNP解析で定評のあるMIG-Seq法を組み合わせることにより、詳細なエキノコックスの遺伝的背景の解析が可能となることを示すことができた。 3)については、現在、分離株の樹立途中で、最終目標である分離株間の生物学的性状の比較解析実験には至っていないが、これまでに感染成立率について全く情報がなかった野外採取糞便中の虫卵を用いた感染実験では非常に高い感染成立率が得られ、現在進行中の遺伝子型分離実験のみならず、次年度も継続する遺伝子型分離実験においても良い成績が期待できる成果が得られた。 4)については、国際雑誌への論文発表1件、学会発表3件の発表を行い、関連する研究者コミュニティに積極的に情報発信した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は概ね順調に推移しており、次年度は本年度の研究計画を継続し、最終年度にモデル開発他に着手する予定である。 材料の入手については、キツネ由来成虫、キツネ糞便由来虫卵の入手を継続する一方で、本年度保留していた、ヒト、家畜、ノネズミ由来のエキノコックス幼虫の材料入手を進めていく。実際、ヒト材料については、北海道大学病院と共同研究案を作成し、現在部局の審査を受けている段階である。また、家畜(豚、馬)および固有中間宿主(ノネズミ)由来の幼虫についても、北海道と協議をすでに始めている。 得られた材料については遺伝子型別を行う一方で、宿主と遺伝子型の相関関係を解析し、遺伝子型別の宿主特異性を明らかにする。一方で、分離株を利用した生物学的特性の解明に着手し、実験小動物への感染実験によるin vivoでの解析とin vitro培養系での解析を並行して行う。さらに、分離株の冷凍保存技術の開発も手がける。 最終年度には、生物学的性状の大きく異なる遺伝子型を選択し、分離株特異的な病原性を利用した疾病モデル開発に着手する。 本研究を通して得られた成果については、獣医学、医学、寄生虫学分野において積極的に学会発表、研究集会発表ならびに科学雑誌への論文発表を行い、関連する研究者コミュニティに情報発信して行く。さらに、所属大学の科学技術コミニケーション制度や研究成果のプレス発表制度、あるいは他団体主催の勉強/研修会他を利用して、一般市民への情報提供を行い、研究成果の社会への還元を積極的に行っていく予定である。
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[Presentation] Tracing the origins of Echinococcus multilocularis in Hokkaido, Japan: genetic validation of a historical hypothesis2023
Author(s)
Naoki Hayashi, Ryo Nakao, Yuma Ohari, Takao Irie, Hirokazu Kouguchi, Elisha Chatanga, Wessam Mohamed, Mohamed Moustafa, Gohta Kinoshita, Munehiro Okamoto, Kinpei Yagi, Nariaki Nonaka
Organizer
29th International Conference of the World Association for the Advancement of Veterinary Parasitology
Int'l Joint Research
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