2023 Fiscal Year Annual Research Report
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23H02396
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
昆 俊亮 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (70506641)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞競合 / 細胞競合マーカー / 近接細胞蛍光標識技術 / sGRAPHIC |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合は、上皮細胞層に出現した変異細胞と隣接する正常細胞との細胞間相互作用によって変異細胞が排除される生命現象である。正常細胞が変異細胞を排除する分子実態は不明であり、また細胞競合にコミットした正常細胞特異的に発現増加する細胞競合マーカーは同定されていない。本課題では、新規の近接細胞蛍光標識技術であるsecretory GPI-anchored Reconstitution-Activated Proteins Highlight Intracellular Connections (sGRAPHIC)プローブを活用して、変異細胞に隣接する正常細胞のみをGFP標識し、遺伝子発現解析を行うことにより細胞競合の制御因子を同定することを目的とした。イヌ腎上皮細胞由来のMDCK細胞を用い、活性化Ras変異細胞と分泌型のC末端GFPを発現する細胞株ならびに細胞膜に局在するN末端GFPを発現する細胞株を樹立した。これらの細胞株を共培養することにより、Ras変異細胞に隣接する正常細胞のみをGFP標識することに成功した。続いて、GFP細胞をFACSソーティング後、bulk RNA-seq解析を行い、遺伝子発現の変化を網羅的に解析した。その結果、複数の遺伝子が発現増加することを突き止めた。さらに、in situ hybridizationにより、Ras変異細胞に隣接する正常細胞においてmRNAの発現が増加することを確認した。このスクリーニング実験により細胞競合特異的に正常細胞にて発現増加する分子について、細胞競合マウスモデル(低濃度のタモキシフェン投与により腸管に少数の活性化Ras変異細胞を産生するマウス)を用いて、Ras変異細胞の周辺に存在する正常上皮細胞における発現変化を免疫染色により評価した。そして、最終的に細胞競合マーカーとなり得る候補分子を複数同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
sGRAPHICは分割型のGFPをベースとしており、C末端側の分割GFPを細胞外に分泌するように設計され(cGRAPHIC)、標識したい細胞にGPIアンカー型のN末端GFP(nGRAPHIC)を導入することにより、両者を発現した細胞が近接した場合にのみGFPが再構成される。研究代表者のグループでは、イヌ腎上皮由来の非形質転換細胞株であるMDCK細胞を用いて、ドキシサイクリン依存的に活性化Ras変異体とcGRAPHICをポリシストロニックに発現する細胞株(cGRAPHIC-RasV12変異細胞)と正常MDCK細胞にnGRAPHICを恒常的に発現する細胞株(nGRAPHIC細胞)を樹立した。これらの細胞株を1:50の比率で混合培養し(cGRAPHIC-RasV12変異細胞:nGRAPHIC細胞=1:50)、細胞層形成後にドキシサイクリンを添加し細胞競合を誘導すると、RasV12変異細胞に隣接した正常細胞のみをGFP標識することに成功した。対象細胞としてcGRAPHICのみを発現する細胞株(cGRAPHIC細胞)も樹立し、同様の方法にて隣接細胞をGFP標識した。そして、cGRAPHIC-RasV12変異細胞に隣接した正常細胞とcGRAPHIC細胞に隣接した正常細胞をFACSソーティングし、RNA-seq解析を行なった結果、多数の分子がRasV12変異細胞に隣接する正常細胞で有意に発現増加することを突き止めた。これらの分子が実際に発現増加するかを定量的PCRにて確認し、in situ hybridizationによってmRNAの発現を視覚的に観察した。続いて、これらのスクリーニング実験にて細胞競合特異的に発現増加が認められた分子に関して、細胞競合マウスモデルを用いてタンパクレベルでの発現変化を検討し、活性化Ras変異細胞の周辺の正常細胞にて顕著に発現増加する分子を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で記載したスクリーニング実験を今後も継続し、in vitroのin situ hybridization実験とin vivoの細胞競合マウスモデルを用いた免疫染色実験を並行して進め、活性化Ras変異細胞に隣接する正常細胞にて発現増加する分子を引き続き探索する。これらの実験にて、細胞競合特異的に正常細胞にて発現増加が認められる分子を細胞競合マーカーの候補分子とする。続けて、ヒト正常組織の検体を用いてこれら候補分子の免疫染色を行い、発現増加する細胞を俯瞰的に計測することにより、生理的な細胞競合の頻度を検討する。さらには、これらの分子が強発現する細胞に取り囲まれた細胞のシークエンス解析を行い、変異原性の有無を検討することにより細胞競合マーカーとしての有用性を評価する。また、細胞競合における機能的重要性を評価するために、ゲノム編集によりノックアウト細胞株もしくはノックアウトマウスを作出し、細胞競合によるRasV12変異細胞の排除率を検討する予定である。
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[Journal Article] Wnt activation-induced disturbance of cell competition causes diffuse invasion of transformed cells through upregulation of NF-κB-mediated MMP212023
Author(s)
Nakai, K., Lin, H., Yamano, S., Tanaka, S., Kitamoto, S., Sakuma, K., Kurauchi, J., Akter, E., Konno, M., Koseki, J., Takahashi, H., Yokoyama, H., Shiraki, Y., Enomoto, A., Abe, S., Hayakawa, Y., Ushiku, T., Mutoh, M., Fujita, Y. and Kon, S.
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Journal Title
Nature Communicaitons
Volume: 14
Pages: 7048
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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