2023 Fiscal Year Annual Research Report
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23H02409
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
坪内 英生 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (20283822)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 相同組換え / Rad51 / BRCA2 / ナガニシア酵母 / 乳がん・卵巣がん症候群 / 担子菌 / ゲノム恒常性 / DNA傷害修復 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト相同組換えに必須な機能を持つBRCA2はガン抑制遺伝子としてゲノム安定性の維持に重要な役割を担う。しかし既存のモデル酵母(S. cerevisiae やS. pombe)はBRCA2オーソログを持たず、ヒトやニワトリ等の脊椎動物の実験系では解析方法に限界があることから、BRCA2の機能に対する理解は未だ限定的である。申請者は担子菌門に属するナガニシア酵母(Naganishia liquefaciens)がBRCA2オーソログを持つことを見出した。BRCA2ホモログを菌類で広く探索したところ600以上のBRCA2ホモログが確認されたが、S. cerevisiae やS. pombeが属する子嚢菌生物ではBRCA2ホモログは全く見つからなかった。この発見により菌類のBRCA2ホモログに共通する特徴が明らかとなった。ヒトのBRCA2は3,000以上のアミノ酸からなる巨大タンパク質であるが、安定した構造を形成しているのはC末端のみであり、この領域はヘリックス領域、3つの連続したDNA結合部位(OBフォールド)より構成される。それ以外の構造を取らない領域にはBRCリピートと呼ばれる、約35アミノ酸よりなる特徴的な配列が8箇所、散らばって存在している。BRCリピートは相同組換え酵素RAD51と物理的に相互作用する部位である。一方で、菌類の持つBRCA2ホモログはヒトBRCA2の約3分の1ほどの大きさであり、相同領域はほぼC末端領域に限定されていた。また、ヒトなど高等真核生物で共通して見られる3つ目のOBフォールドが菌類のBRCA2では欠失していた。また、C末端以外の領域で3つ程度のBRCリピート候補配列が見つかった。遺伝子破壊を用いた遺伝的解析により、ナガニシア酵母のBRCA2はヒト同様にRAD51と共同で相同組換えに中心的役割を果たしていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BRCA2のホモログが菌類で広く保存されており、脊椎動物のBRCA2と同様に相同組換えに中心的役割を果たすことをナガニシア酵母を用いて明確に示し、論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
ナガニシア酵母でBRCA2ホモログが見つかり、ナガニシア酵母を用いたBRCA2の機能解析を分子遺伝学的手法によって展開する準備が整いつつある。ナガニシア酵母の持つBRCA2ホモログはヒトのものより小さくタンパク質精製が容易であるため、これまでに確立した試験管内再構成系を利用することでBRCA2の機能の本質を生化学的に明らかにすることが期待出来る。またBRCA2と相互作用する遺伝子を網羅的に探索することでその遺伝的ネットワークの全容解明に繋げたい。
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