2023 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ電子顕微鏡による光合成蛋白質超複合体の構造解析基盤
Project/Area Number |
23H02428
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川上 恵典 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (40619904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澄 大輔 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 准教授 (70613149)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 光合成 / 光エネルギー / 光捕集 / クライオ電子顕微鏡 / 構造生物化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上に生息する藻類は、光エネルギーを吸収して光合成を行っている。藻類がもつフィコビリソーム(Phycobilisome, PBS)は、巨大な水溶性光捕集蛋白質複合体であり、吸収した光エネルギーを光化学系蛋白質群(光化学系I, 光化学系II)に伝達する。PBSから光化学系蛋白質群へのエネルギー伝達の仕組みは未だ詳細に明らかになっておらず、PBSの立体構造及び光化学系蛋白質群との相互作用を明らかにすることは、藻類の光捕集・エネルギー伝達の仕組みを理解する上で重要である。本研究は、PBSと光化学系蛋白質群が相互作用した光合成超複合体の立体構造をクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析によって明らかにし、PBSの光捕集・伝達システムを解明することを目的としている。 2023年度は、好熱性シアノバクテリア由来PSIIのフェムト秒ポンプ・プローブ分光によって、PSIIにおけるエネルギー移動とそれに続く電荷分離反応の詳細を明らかにし、その研究成果が国際雑誌『Photosynthesis Research』に受理された。そして、PBS-PSIIの光誘起時間分割解析を行うための「光照射グリッド凍結装置」を制作し、従来のグリッド凍結装置(Vitrobot)では凍結操作に数秒必要とするのに対し、新たに制作した装置では閃光照射後に数十ミリ秒以内で試料を凍結、光照射による状態をトラップできる性能を得ることができた。そして、試料調製・可溶化条件の最適化により、よりインタクトなPBS-PSIIの調製が行うことができようになった。加えて、得られたPBS-PSIIのエネルギー移動解析を行い、PBSからPSIIへのエネルギー移動を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、フェムト秒ポンプ・プローブ分光によってPSII内のエネルギー移動とそれに続く電荷分離反応の詳細を明らかにし、PBS-PSII内のエネルギー移動解析と共に、PBS-PSIIの構造解析のための「光照射グリッド凍結装置」の制作を行った。そして、よりインタクトなPBS-PSIIが得られる調製条件を確立させた。これらのことから、本研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として、得られたPBS-PSIIのクライオ電子顕微鏡測定・解析を進めていく。そして、2023年度に制作した「光照射グリッド凍結装置」を用いてPBS-PSIIの光反応解析を進めていく。
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