2023 Fiscal Year Annual Research Report
イオンポンプ蛋白質作動機構の構造的理解の完成とその高次機能の構造生物学への発展
Project/Area Number |
23H02443
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 近 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任教授 (70172210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 隆太 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任講師 (50598472)
西山 尚志 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任助教 (30647011)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 膜蛋白質 / イオンポンプ / 構造生物学 / 原子構造 / 作動機構 / クライオ電顕 / 結晶解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイオンポンプを代表するCa2+ポンプとNa+ポンプに関し、その作動機構の原子構造に基づく理解を完成することを目指している。 (a)Ca2+ポンプ作動機構の構造的解明:膜内に隔離したCa2+を内腔側に放出する過程、すなわちE1P.ADP.2Ca2+からE2Pに至る過程は、構造変化が大きすぎるためにそのメカニズムがよくわからなかった。そこで、その間に位置する人工的中間体を創出するために、立体障害の導入を試みた。立体障害としては側鎖レベルから二次構造要素等広く考えられるが、まずは点変異体から始め、4つの変異体を設計し、長時間の分子動力学計算によって安定性を検討するとともに、実際に高等動物培養細胞にて大量生産し、蛋白質分解酵素を用いた部分分解によるfoldingの検討を行った。そのうち2つについてはクライオ電顕による予備的検討を終えた。一方で、これまでに得た結晶解析データの見直しと高分解能化を行い、E1.ATP.2Ca2+ -> E1P.ADP.2Ca2+における燐酸転移とE2P -> E2におけるgating機構に関し、重要な知見を得ることができた。 (b)Na+ポンプの構造生物学:X線結晶解析によるE1.3Na+状態の原子構造に関する論文を発表した。また、ポンプをチャネルに変える海産毒素パリトキシンとの複合体の構造決定を進め、チャネル化した状態のクライオ電顕による構造決定にも成功した。現在論文を執筆中である。さらに、adducinやカベオリンとの複合体の構造決定に向け、両者の大量生産を行う系を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ca2+ポンプ、Na+ポンプの両方の研究で予想より進展している。Ca2+ポンプに関しては燐酸転移に係る高分解能結晶構造解析が予想外の進展を見せており、Na+ポンプに関しては海産毒物パリトキシンによるイオンポンプのチャネル化の機構を明らかにでき、非常に困難と予想していたパリトキシンそのものの原子モデル構築をも完成できたからである。これら2つのポンプの構造的・機能的違いと共通の作動原理も、予想以上に明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(a)Ca2+ポンプ作動機構の構造的解明:人工的中間体創出に関しては系を確立できたので、中間体の系統的な生成に向けて、挿入位置、挿入配列の最適化を試みるとともに、実際の構造決定に挑戦する。E1.ATP.2Ca2+ -> E1P.ADP.2Ca2+における燐酸転移に関しては、そのメカニズムに迫れるデータが得られつつあるので、結晶化条件、データ収集のタイミング等の最適化を図り、高分解能データを収集する。 (b)Na+ポンプの構造生物学:パリトキシンとの複合体によるポンプのチャネル化の論文を完成することが第一目標である。また、E2P状態にK+が結合することによる細胞外側ゲートの開閉機構に関する重要な知見を得たので、その出版が次の目標である。一方で、adducinやカベオリンとの複合体をナノディスクに再構成し、構造決定を試みる。
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