2023 Fiscal Year Annual Research Report
両方向性の分子モーターを創って生物分子モーターの動作原理を理解する
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23H02457
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
古田 健也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究マネージャー (40571831)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 生物分子モーター / ATP加水分解酵素 / タンパク質デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ATP加水分解能を完全に失ったキネシン頭部の変異体を、ダイニンの微小管結合部位の代わりに挿入した新しい分子モーターに関して、これらをガラス基板上に固定して微小管の滑り運動を観察した。モーター密度を変えながら運動速度の詳細なデータを取ったところ、当初に想定された通り、モーター密度に依存して運動方向をスイッチする現象が確認された。つまり、モーター密度が薄いときはマイナス端方向性の運動を起こすが、高密度域ではプラス端方向性の運動を示した。これは、分子の密度に依存して、共存する2つの運動メカニズムのうちのどちらか一方が、より顕在化し、運動方向を切り替えたことを意味している可能性がある。この仮説をさらに検証するため、ダイニンの運動方向性を逆転させた先行研究(Can et al., Nature 2019)で使われていた酵母の細胞質ダイニンの変異体をそのまま用いて、モーター密度を変えることによって運動方向が切り替わるかどうかを調べた。当該の論文では、変異によってパワーストロークの方向を逆転させたところ、逆方向のプラス端に運動するモーターになった一方で、微小管から解離しやすい方向のバイアスはマイナス端方向のままであったことから、ダイニンの運動方向はパワーストロークの向きで決まると結論付けた。しかし、我々が全く同じ変異体を用い、モーター密度を上げていったところ、運動方向がプラス端からマイナス端にスイッチしたことから、パワーストロークの向きで決まる運動メカニズムとは別の運動メカニズムによる運動が観察された可能性があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で想定された通りの結果が出ており、申請書に記載の年度計画と比較してほぼ遅延が無く順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
クライオ電子顕微鏡法による構造解析によって、微小管上で「不活性化されたキネシンの頭部を融合したダイニン」の分子の形や向きを調べる。微小管とダイニンの結合が弱いためクライオ電顕による撮影条件を工夫する必要があったが、様々な工夫を行った結果、すでに電顕による撮影は完了しており、残るは、得られた大量の画像から微小管の極性とダイニン分子の相対的な向きを決める解析作業のみである。 また、微小管から解離しやすい方向のバイアスについて、光ピンセット装置を用いて調べる。具体的には、光ピンセットで捕捉したモーターを微小管に結合させ、プラス端方向とマイナス端方向に交互にスキャンする。このときに得られたモーターに掛かる力の向き・大きさと、モーターが解離するまでの時間の組み合わせのデータから、微小管のどちらの方向に引っ張られたときに解離しやすいか、つまり、解離方向によって運動方向が決まる、いわばラチェットとしての性質が明らかになると期待される。
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