2023 Fiscal Year Annual Research Report
Sry共役クロマチン因子の同定と性決定分子機構の解明
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23H02489
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒木 俊介 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 准教授 (50735793)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 性決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
ほ乳類は性染色体がXY型は雄、XX型は雌になる。Y染色体上には性決定のマスター転写因子Sryが存在する。一般に転写因子が遺伝子を活性化する際、各々が標的に応じた共役因子と大きな複合体を形成する。種の保存という観点からSryは最も重要な転写因子のひとつである。しかし、1991年にSryが発見されてから30年以上が経つにも関わらず、Sryと共役する因子は未だにひとつも同定されていない。本研究では、Sryが標的遺伝子を活性化する際に共役する相互作用因子 、すなわち性決定に関わる新規の転写コファクターやクロマチン制御因子を同定し、その機能を解明することを目指した。 申請者はこれまでに、Sryと近依存性ビオチン化酵素を付加した融合タンパク質を発現するES細胞株を用いてBioID法を行い、Sryと相互作用する可能性の候補遺伝子を得ている。本年度は、ゲノム編集により各々の候補遺伝子を欠損したマウス胚を作製し、F0世代で性転換の有無を検証した。結果、うち1つの遺伝子について、性染色体XY型のホモ欠損体がメスに性転換することを見いだした。今後はこの遺伝子に着目し、性決定シグナル経路における作用点と、Sryの転写活性への寄与を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Sryが転写因子として機能する際にタンパク質複合体を形成する場合、その複合体に含まれるタンパク質をコードする遺伝子の欠損マウスもまた、雄から雌への性転換を起こすことが予想される。今回、BioID法から見いだしたSryと相互作用するタンパク質の中から、実際にその欠損により性転換を起こす遺伝子を見つけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の遺伝子について、性決定への関与のメカニズムを明らかにする。遺伝子欠損マウスを再度ゲノム編集により作製し、マウスを系統化する。この遺伝子のホモ欠損体は出生後に致死となることから、同時並行してfloxマウスを作製し、生殖腺体細胞特異的にCreを発現する系統 (Nr5a1-Cre Tgなど)と掛け合わせ、生殖腺特異的なコンディショナル欠損マウスも樹立する。これらのマウスを用いて生殖腺のRNA-seq解析とSry強制発現による性転換のレスキュー実験を実施し、性決定シグナル経路への作用点を明らかにする。
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