2023 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質形成において神経細胞が移動を停止し配置する機構の解明
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23H02491
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
廣田 ゆき 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00453548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広井 賀子 神奈川工科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20548408)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 大脳皮質層形成 / 神経細胞移動 / 細胞接着 / 反発シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質形成過程では、脳室付近で誕生した神経細胞が表層へ向かって移動したのちに、正確に特定の位置で停止することで、規則正しく表層の細胞が入れ替わり、整然とした6層構造を形成し神経回路の基盤となる。よって、神経細胞移動停止は脳の高次機能実現に貢献する重要なステップであるが、その制御機構には不明な点が多く残されている。申請者はこれまでの研究で、このステップが脳の最表層である「辺縁帯」に存在する複数の因子「細胞外糖タンパク質リーリンシグナル経路」「細胞接着分子」「神経反発因子」により重複的に制御されることを見出した。本研究課題では、これらの作用機序の解明により、神経細胞が能動的に、かつ細胞外シグナルに応答しながら層構造を形成する仕組みを明らかにする。 大脳皮質表層の細胞体排除領域の形成に必要な分子の候補として、細胞接着分子Cxadrに着目し、リン酸化に依存してニューロン移動制御に重要であることを見出した。細胞接着を介した制御機構に関しては、移動終了時期の神経細胞において複数のカドヘリンが突起に選択的に局在しており、機能阻害実験により突起/細胞体の選別に関わることを示唆する結果を得ている。これらの候補分子のうちCadherin-6がニューロン移動に重要であり、その作用機序としてインテグリンの活性化に機能を有することを示唆するデータを得た。神経反発因子の関与については、これまでの培養実験により辺縁帯に移動細胞に対する反発活性が存在することが明らかになった。その反発活性の実体として、膜貫通蛋白質FLRT2とコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)を候補として考えている。これらの機能の解析のため、培養下で生体内の移動停止場所である辺縁帯と皮質板の境界を再現する系を開発に着手した。2種類の細胞抽出物を交互に隙間なく塗布するために、新規のシリコンデバイスの開発を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーリンによる凝集塊形成システムを用いた解析結果から、大脳皮質表層の細胞体排除領域の形成に必要な分子の候補として、細胞接着分子Cxadrに着目している。これまでの解析によってCxadrが移動終了時に辺縁帯内に伸長した突起に局在することと、リーリン下流因子であるFynによってリン酸化されることを見出したことから、Cxadrがリーリンの下流において神経細胞移動停止を制御すると推定し、まず部位欠失変異体を作成しリン酸化部位を決定を試みた。その結果、複数のリン酸化部位を有することを見出した。 次に、細胞体排除領域の形成がリン酸化に依存するかを調べるため、候補となるリン酸化部位をアラニン(非リン酸化状態を模倣)もしくはグルタミン酸(リン酸化状態を模倣)に置換した変異体を作成し、ノックダウン(KD)に対するレスキュー効果を調べた。その結果、複数のリン酸化サイトがニューロン移動制御に重要であることが明らかになった。 細胞接着を介した制御機構に関しては、移動終了時期の神経細胞において複数のカドヘリンが突起に選択的に局在しており、機能阻害実験により突起/細胞体の選別に関わることを示唆する結果を得ている。これらの候補分子のうちCadherin-6がニューロン移動に重要であり、その作用機序としてインテグリンの活性化に機能を有することを示唆するデータを得た。 神経反発因子の関与については、これまでの培養実験により辺縁帯に移動細胞に対する反発活性が存在することが明らかになった。その反発活性の実体として、膜貫通蛋白質FLRT2とコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)を候補として考えている。これらの機能の解析のため、培養下で生体内の移動停止場所である辺縁帯と皮質板の境界を再現する系を開発に着手した。2種類の細胞抽出物を交互に隙間なく塗布するために、新規のシリコンデバイスの開発を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Cxadrがニューロン移動を制御する作用機序として、細胞接着を制御する可能性が考えられる。Cxadrはがん細胞および上皮細胞においてカドヘリンの動態を制御する可能性が示唆されていることから、ニューロン移動および移動停止において重要な機能を持つN-Cadherinの関与を推定し初代培養細胞および生体内においてN-CadherinがCxadrの機能阻害時に局在および接着性を変化させるか検討する。またこの機能にリン酸化が関与するか調べる。関与が推定された場合には、N-Cadherinの膜への局在または発現量に影響を与えることが想定されるため、それらを検討する。 細胞接着を介した制御機構に関しては、Cadherin-6によるインテグリンの活性化が細胞間または細胞外マトリックスへの接着、細胞運動能に影響を与えるかを検討する。さらに下流経路としてFAK, AKT, ERK1/2, Srcのリン酸化に影響を与えるかを生化学手法を用いて検討する。 神経反発因子の関与については、辺縁帯と皮質板の境界を再現する系の開発を進め効率よく作成できるデバイスを完成させる。それを用いて、2種類の細胞抽出物を交互に隙間なく塗布したディッシュ上にニューロンを分布させ、細胞体および神経突起の分布に影響を与えるかを調べる。影響が見られた場合、リーリンの存在下、さらにCxadr、N-CadherinのKDが分布に影響を与えるかを調べる。
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[Presentation] Erratic and blood vessel-guided migration of astrocyte progenitors in the cerebral cortex.2023
Author(s)
Hidenori Tabata, Megumi Sasaki, Masakazu Agetsuma, Hitomi Sano, Yuki Hirota, Michio Miyajima, Kanehiro Hayashi, Takao Honda, Masashi Nishikawa, Yutaka Inaguma, Hidenori Ito, Hirohide Takebayashi, Masatsugu Ema, Kazuhiro Ikenaka, Junichi Nabekura, Koh-ichi Nagata, and Kazunori Nakajima
Organizer
Society for Neuroscience, Neuroscience 2023 meeting
Int'l Joint Research
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