2023 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチドシグナル伝達を介した根粒共生および窒素応答の制御機構
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23H02495
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
壽崎 拓哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40575825)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 根粒共生 / 窒素応答 / ミヤコグサ / ペプチドシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
マメ科植物は、窒素固定細菌である根粒菌との共生を介し、生育に必須な栄養素である窒素を効率的に獲得する仕組み(根粒共生)を持っている。植物の根に形成される共生器官が根粒であり、根粒菌はその中にいて、空気中の窒素をアンモニアへと変換する窒素固定を行う。窒素固定反応を触媒する酵素が働くためには鉄が必要であるが、どこから、どのように鉄が根粒へと運ばれて窒素固定のために使われるのか、その仕組みはほとんど解明されていなかった。今年度は研究代表者の研究グループにおいて継続して進めていた研究プロジェクトとして、マメ科のモデル植物ミヤコグサを用い、根粒共生過程における体内の窒素状態に応じた遺伝子発現解析を行った。その結果、50個程度のアミノ酸によって構成されるIRON MAN (IMA)ペプチドの同定に成功した。IMAペプチドは根粒菌の感染によって全身的(地上部と根)に機能し、根粒に鉄を集める働きを持つことが分かった。さらに、根粒共生を行わない植物であるシロイヌナズナにおけるIMAペプチドの機能を解析した結果、ミヤコグサとシロイヌナズナのいずれにも、IMAペプチドが植物体内の窒素量の増加に応じて鉄を得ることで窒素恒常性を維持し、植物の成長を制御する仕組みが存在することを発見した。これらの成果をまとめ、論文発表を行った。これまで、土壌中の窒素栄養に応じた根粒共生の制御の仕組みを明らかにしてきたが、本研究により窒素栄養に応じた鉄獲得のメカニズムが明らかになったことで、植物の環境適応の仕組みに関する理解がさらに深まった。本研究成果は、植物の微生物共生や栄養利用の能力を最大限に引き出し、持続可能な社会に貢献する技術開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の中心に据えているペプチド因子の研究に関して最初の論文発表を行うほど研究が進展したため。
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Strategy for Future Research Activity |
IMAペプチドの上流と下流の分子機構について明らかにする。また、新たなペプチド因子を同定する。
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