2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H02503
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山口 暢俊 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90767899)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 植物 / 花 / 花弁脱離 / ジャスモン酸 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の花弁は適切な時期に脱離するように遺伝的にプログラムされている。花弁の脱離は、ジャスモン酸などやエチレンの植物ホルモンが制御することがよく知られているが、どの因子がどの細胞に構造的な変化をもたらして花弁の脱離を実行するのか?という分子基盤は不明であった。私は転写因子AGAMOUS(AG)がジャスモン酸の合成酵素をコードする遺伝子を転写したあとに起こる変化に注目した。花弁の基部細胞にジャスモン酸が蓄積すると、花弁基部の細胞の性質が変化を開始する。MYC転写因子がTPLリプレッサーによる抑制から解除され、PolIIの働きで、下流のNAC102遺伝子を転写する。このNAC型転写因子NAC102はオートファジーを制御するATG遺伝子群の転写を促して細胞を分化させて、器官を脱離させる。脱離が正常におこる野生型では、オートファゴソームが形成され、花弁基部細胞の細胞死、活性酸素の蓄積などが見られる。一方で、脱離が遅れるag変異体やジャスモン酸の蓄積量が減る変異体やシグナル伝達ができない変異体では、オートファゴソームの形成が遅れるだけでなく、花弁基部細胞の細胞死、活性酸素の蓄積などにも遅延が見られた。これらの解析により、花弁基部の脱離は、ジャスモン酸によって誘導されるオートファジーによって引き起こされる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
植物の花弁は適切な時期に脱離するように遺伝的にプログラムされている。花弁の脱離は、ジャスモン酸などやエチレンの植物ホルモンが制御することがよく知られているが、どの因子がどの細胞に構造的な変化をもたらして花弁の脱離を実行するのか?という分子基盤は不明であった。私は転写因子AGAMOUS(AG)がジャスモン酸の合成酵素をコードする遺伝子を転写したあとに起こる変化に注目した。花弁の基部細胞にジャスモン酸が蓄積すると、花弁基部の細胞の性質が変化を開始する。MYC転写因子がTPLリプレッサーによる抑制から解除され、PolIIの働きで、下流のNAC102遺伝子を転写する。このNAC型転写因子NAC102はオートファジーを制御するATG遺伝子群の転写を促して細胞を分化させて、器官を脱離させる。脱離が正常におこる野生型では、オートファゴソームが形成され、花弁基部細胞の細胞死、活性酸素の蓄積などが見られる。一方で 、脱離が遅れるag変異体やジャスモン酸の蓄積量が減る変異体やシグナル伝達ができない変異体では、オートファゴソームの形成が遅れるだけでなく、花弁基部細胞の細胞死、活性酸素の蓄積などにも遅延が見られた。これらの解析により、花弁基部の脱離は、ジャスモン酸によって誘導されるオートファジーによって引き起こされる可能性が考えられた。成果をFuruta et al., 2024(Nature Com)に公表した。残りの補助期間では、この遺伝子経路以外で、花弁を脱離させるネットワークを解析する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ジャスモン酸のシグナル伝達で中心的な役割を果たすMYC転写因子の下流の遺伝子に注目している。NAC以外にも、STPやTCPなど、花弁の脱離時期に発現が上がってくる遺伝子を多く見出している。変異体の解析を通して、その脱離における重要性を評価する。ジャスモン酸だけでなく、エチレンも同様の脱離効果をもたらす。これを制御する分子基盤を解明する。
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