2023 Fiscal Year Annual Research Report
刺胞動物エダアシクラゲにおける枝分かれ形成機構の解析
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23H02508
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊野 岳 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (80372605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 能士 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (20443442)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | エダアシクラゲ / 枝分かれ / 多能性幹細胞 / RTKシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
エダアシクラゲ触手の最終的な枝分かれパターンに大きな影響を与えると考えられる、個々の枝分かれが繰り返し起こるタイミングを決める仕組みについて、それぞれの枝触手の形成タイミングが、ひとつ前に出来た枝触手を含む触手先端部の切除により早まるか否かを切除実験により調べた。その結果、確かにタイミングが早まることを明らかにした。さらに、Wntシグナルを促進する薬剤であるAlsterpaullone処理をしたところ、同様に枝触手の形成タイミングが早まることがわかった。これらのことから、1つ前に出来た枝触手を含む触手先端部から、次の枝触手の形成を抑制するWntシグナル抑制因子が出ており、主触手の成長伸長に伴い枝分かれ部位がこの抑制シグナルの範囲外になった時に、枝分かれが起こるモデルを提唱するに至った。このモデルを検証するために、枝分かれ形成期の触手で発現するWntシグナル抑制分泌因子を同定するため、RNA-seq解析を行い候補となる13遺伝子(sFRP3を2遺伝子、Dkk3を6遺伝子、Notumを4遺伝子、Cerberusを1遺伝子)を特定した。これら全てについてin situ hybridizationを行ったところ、2遺伝子について興味深い発現パターンが得られた。 また、現在までに枝触手が形成/伸長する過程でFGFシグナルの関与が示唆されているが、枝触手の形成/伸長におけるFGFシグナルの機能をより詳細に明らかにするために、RNA-seq解析によりFGFシグナルにより制御される下流因子の探索を以下の通り行った。すなわち、枝触手芽ができたばかりの正常な触手と、同時期のFGF受容体阻害剤(SU5402)処理により枝触手が形成されない触手の間で発現RNAの比較を行い、425のDEGを特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析が順調に進み、本研究の課題である1)枝分かれが繰り返し起こるタイミングを決める候補因子(Wntシグナル抑制因子)と、2)枝触手形成/伸長に関わるFGFシグナル下流候補因子(425のDEG)の、両者を特定することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
個々の枝分かれが繰り返し起こるタイミングを決める仕組みを明らかにするため、これまでに特定したタイミングを決める候補因子である13のWntシグナル抑制分泌因子の発現解析を引き続き行うのと同時に、RNAi法による機能阻害実験を行い、どの遺伝子が関わるのかを決定する。 次に、FGFシグナル下流候補因子である425のDEGのなかから、まずは転写因子に着目し、クローニング後にin situ hybirdizationにより枝分かれ部位に集積する多能性幹細胞i-cellで発現しているのか否かを確認する。多能性幹細胞i-cellで発現するものについては、さらにRNAi法により機能阻害実験を行い、枝触手形成/伸長への影響を観察する。 さらに、枝分かれ部位に集積した多能性幹細胞i-cellがその後の枝触手形成/伸長に伴って分裂/増殖していく様子をライブで観察する手法を確立する。確立のためには、現在取組中の多能性幹細胞i-cellを特異的に可視化するtransgenic line(多能性幹細胞i-cellで発現するNanos1遺伝子の転写調節領域を使用)の作成を引き続き行うのと同時に、細胞膜を生きたまま可視化するFM1-43を使った方法も試す。確立した暁には、正常な触手と、SU5402処理または上記DEGの機能阻害をした触手の間での、枝分かれ部位に集積した多能性幹細胞i-cellの分裂や分裂パターンの違いをライブで観察する。 最後に、触手の枝分かれが1度しか起こらないハイクラゲの研究室内飼育系の確立を試みる。エダアシクラゲで明らかになってきた枝分かれ機構が、ハイクラゲでどのように変更されて2度目の枝分かれが起きないのかを明らかにしたい。
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