2023 Fiscal Year Annual Research Report
リジン残基メチル化・チロシン残基リン酸化触媒系による生細胞エピゲノム操作の拡充
Project/Area Number |
23H02599
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山次 健三 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (30646807)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | タンパク質 / 翻訳後修飾 / リン酸化 / メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンの翻訳後修飾(PTM)レベルの異常は多くの疾患に関与しているため、ヒストンPTMを人為的に導入できる化学技術は疾患の生命科学的理解および医薬学において重要である。しかし、酵素の機能調節に依存した従来法は、そのヒストン選択性や反応位置選択性が高くないため汎用性が十分ではないうえ、遺伝子改変を必要とするため医薬学的応用可能性に乏しい。本研究は、細胞内でヒストンタンパク質選択的かつ位置選択的なリジン残基メチル化修飾およびチロシン残基リン酸化修飾を実現する化学触媒系を開発し、細胞のエピゲノムに合成的に介入することを目的とする。 様々な官能基に富んだタンパク質に対して、特定のアミノ酸残基を化学選択的かつ位置選択的に化学修飾するには、通常は不活性であるが目的タンパク質の目的位置周辺でのみ活性化を受けて反応性の高い化学種を出す新たな分子活性化法の開拓が必須である。そこでまず、単一チロシン残基およびリジン残基を基質として、水中・中性・体温付近で目的の化学反応を化学選択的に進行させる新規触媒システムの開発に注力した。 検討の結果、リジン残基のメチル化・アルキル化に対しては、通常は中性水中で安定であるが光触媒あるいは電荷移動錯体形成によって一電子酸化を受け、光照射依存的にアルキル化剤となるモチーフを見出すことに成功した。 チロシン残基のリン酸化に対しては、チロシン残基を一電子酸化してチロシルラジカルを生じさせ、それと速やかに酸素ーリン結合を作るリン酸ドナーの探索を行ったが、望みのリン酸化反応は進行しなかった。しかし、チロシン残基を二電子酸化したのちに生じるジエノン骨格と選択的に反応し、リン酸化チロシンを与える異なる反応系を見出した。今後は本系の最適化をさらに進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン酸化・メチル化ともに、基礎となる分子活性化法を見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に見出したチロシンリン酸化システムおよびリジンアルキル化システムをさらに最適化し、ペプチドないしはタンパク質基質でも反応が進行するように発展させる。
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