2023 Fiscal Year Annual Research Report
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23H02628
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐々木 雄彦 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50333365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 郁 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (70629146)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リン脂質 / がん細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスホイノシタイド(PIPs)は様々な細胞応答を制御する細胞膜リン脂質群である。親水部のリン酸化状態と疎水部の炭化水素鎖の多様性により、数百種類の分子種に分類することができる。我々は、独自のPIPs測定技術を、難治性がんの代表格である悪性脳腫瘍に適用し、ヒト疾患での PIPs分子種包括解析を進めてきた。手術検体、スフェロイド培養検体でのPIPs分子種プロファイリングと分子種特異的代謝酵素、標的タンパク質の機能解析を通して 、腫瘍 制御性PIPs分子種の同定を目指している。脳腫瘍手術検体と患者由来膠芽腫スフェロイドのPIPs包括定量解析を行った。悪性脳腫瘍の凍結手術検体(WHO Grade 4 の膠芽腫40 例、WHO Grade2/3 グリオーマ40 例:星細胞腫25 例、 乏突起膠腫15 例を含む)の解析から、グリオブラストーマにのみ存在するPIPs分子種(以下glioblastoma-specific PIPs: GS-PIP)を見出した。GS-PIPは、グリオブラストーマ症例の約半数で検出された。患者手術検体からニューロスフェア培養法で樹立された神経膠芽腫スフェロイド3株のPIPsプロファイルをPRMC-MS解析にて得たが、この中にはGS-PIPsは検出されなかった。また、グリオブラストーマの約10%、アストロサイトーマの約30%で、GS-PIPとは異なるPIPs分子種が存在することを見出した。このPIPs分子種はこれまでにPRMC-MSで解析した約100種類の細胞株ではほとんど存在が確認されない稀少な分子種であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の新規知見が得られた点で順調に進展していると判断した。グリオブラストーマにのみ存在するPIPs分子種( GS-PIP)を見出した。GS-PIPは、グリオブラストーマ症例の約半数で検出された。また、グリオブラストーマの約10%、アストロサイトーマの約30%で、GS-PIPとは異なるPIPs分子種が存在することを見出した。 一方で、患者手術検体からニューロスフェア培養法で樹立された神経膠芽腫スフェロイド3株のPIPsプロファイルをPRMC-MS解析にて得たが、この中にはGS-PIPsは検出されなかった点が、期待した結果ではなかったため、「おおむね」順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
GS-PIPをもたない(検出感度以下にしか存在しない)神経膠芽腫スフェロイド株を特定できたので、この株の遺伝子操作により、GS-PIPを蓄積する変異株を作製する。がん細胞特性を親株と比較することにより、GS-PIPの主要制御性リン脂質としての機能を解明したい。
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