2023 Fiscal Year Annual Research Report
リーリン経路と細胞膜非対称性の破綻による疾患発症の分子機構解明と、創薬標的の同定
Project/Area Number |
23H02633
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
服部 光治 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (60272481)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / 脳 / リーリン / リン脂質 / フリッパーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
小脳失調・精神遅滞および平衡障害症候群(CAMRQ)は脳の形成異常と変性を伴う疾患であり、その原因遺伝子としてリーリン受容体VLDLRとリン脂質フリッパーゼATP8A2が同定された。リーリン経路の不全が脳の異常につながる理由は比較的よく理解されているが、ATP8A2の機能不全による疾患発症のメカニズムは不明である。本研究では、①リーリン-VLDLR経路と細胞膜非対称性のクロストークの解明、②細胞膜非対称性の異常による神経変性悪化の分子機構解明、③CAMRQおよび神経変性に対する治療法の開発、の3点を目標とする。 VLDLR欠損マウスを作成し、ATP8A1/ATP8A2二重欠損マウスと交配することで、リーリン-VLDLR/Nrp1経路とATP8A1/ATP8A2のあいだに遺伝学的相互作用があるかを検証している。また、ATP8A1とATP8A2は、細胞内小胞輸送にも関与するため、これらの欠損神経細胞で形質膜上の発現量が変化するタンパク質をスクリーニングした結果、抑制性神経伝達に関与する分子への影響を見いだした。ATP8A2の細胞内局在を可視化できる抗体の樹立を目指したが、どうしても得られなかったので、内在性ATP8A2タンパク質のN末端にタグ配列を付加したノックインマウスを作製した。さらに、ATP8A1またはATP8A2の単独欠損マウスの大脳皮質や海馬では神経変性はあまり見られないが、ATP8A1/ATP8A2二重欠損マウスでは中程度の神経変性が観察され、同時にグリア細胞の活性化が観察された。ミクログリアやアストロサイトに発現するPS受容体を、このマウスで欠損させるスクリーニングを実施し、とある分子の欠損により、小脳の神経変性が軽減されることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATP8A1/ATP8A2の欠損による神経変性に関わるいくつかの重要な候補分子を同定した。また、ATP8A2にタグ配列を付加したノックインマウスを作成した。これらの成果をもとに、次年度には大きな発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、in vitro, in vivo両方の検討を行う。特に、小脳の変性におけるATP8A1/ATP8A2と機能と、その治療法開発の基礎検討のため、小脳の神経細胞を初代培養する実験にも着手する。また、ATP8A1/ATP8A2二重欠損マウスの神経変性疾患を治療するための新たな方策をいくつか考えたので、これを実施して解析する。
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