2023 Fiscal Year Annual Research Report
薬用天然物の骨格構築に関わる新奇生合成酵素群の構造機能解明と合成生物学的利用
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23H02641
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 貴裕 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (60734564)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生合成 / 酵素 / 立体構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、放線菌が生産し、抗菌薬としても利用されている天然薬物、リンコサミド化合物群の生合成酵素を取り上げる。リンコマイシンA およびセレスチセチンの生合成中において、生物活性に重要なチオオクトース部位の硫黄原子の導入に関わる酵素群、糖転移酵素 LmbT/CcbTに着目し、酵素の基質特異性の検討、X線結晶構造解析を行った。基質であるGDPの類縁化合物として、ADP、CDP、IDP、UDP、TDPを用いて反応を行ったところ、TDP以外の化合物を基質として認識し、生成物を与えることが判明した。さらには、糖構造の認識の検討として、GDP-mannose, GDP-fucose, UDP-glucoseを用いて反応を行ったところ、これらは基質として受け入れられないことが見出された。以上の基質特異性の検討から、LmbTは、GDPの塩基部分においては比較的寛容な選択性を示すのに対し、糖構造やEGT部分は固く認識していることが明らかとなった。また、LmbTのX線結晶構造解析に着手した。LmbTのアポ体構造と、EGTとGDPが結合した複合体構造、2種類の構造の取得に成功した。これら二つの構造の比較から、基質の結合により全体構造のコンフォメーション変化が起き、活性部位構造を変化させることを見出した。さらに、活性部位において相互作用を形成する残基の重要性を明らかとするために変異体実験を行った。その結果、ほぼ全ての変異体で活性が低下し、基質-酵素間の相互作用が基質の結合、触媒活性に重要な役割を担っていることが確認された。最後に、これら酵素立体構造解析と変異体解析の結果から、LmbTのS-糖転移反応の詳細な反応機構を提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において着目している2種類の酵素のうち、糖転移酵素について機能解析、構造解析を完了し、反応機構を解明した。本研究成果について論文発表を行ったため、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
リンコマイシンA およびセレスチセチンの生合成中において、生物活性に重要なS-アルキル基の構造多様性の構築に関わる酵素群ピリドキサールリン酸要求性酵素LmbF/CcbFに着目し、X線結晶構造解析と量子計算により各酵素の反応機構を深く理解する。さらには、立体構造と反応中間体や酵素の動きの情報を基盤にした合理的酵素機能変換、拡張により、酵素を利用した非天然型新規生物活性化合物の創出を目的として研究を行う。具体的には、LmbF/CcbFの両酵素の複合体構造を取得し、触媒反応に関与するアミノ酸残基を同定する。 さらに、構造、計算を基盤とした変異導入により、LmbFとCcbF間の機能相互変換を試みる。
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