2023 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of pseudo-natural products using enzymes from medicinal plants and development of therapeutic agents for glioblastoma
Project/Area Number |
23H02642
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中村 誠宏 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (20411035)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
小川 慶子 立命館大学, 薬学部, 助教 (20844278)
芦原 英司 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70275197)
松本 崇宏 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (30780431)
木村 寛之 金沢大学, 疾患モデル総合研究センター, 教授 (50437240)
中田 晋 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80590695)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 薬用植物由来酵素 / 擬天然物 / がん幹細胞 / 膠芽腫治療薬 / 生合成 / 遺伝子発現解析 / ゲラニルカルバゾール / セスキテルペンラクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では薬用植物由来酵素を活用することで擬天然物を構築し、得られた化合物を用いて膠芽腫治療薬開発を行うことを趣旨とする。研究代表者は、これまでにミカン科 Murraya 属植物含有ゲラニルカルバゾール類が、スフィア形成法により作成したヒト神経膠芽腫細胞株 (U251-MG) 由来がん幹細胞 (CSC) に対して駆逐作用を有することを見出している。本背景のもと、研究初年度では、カルバゾール誘導体を原料としオオバゲッキツ葉部由来の酵素群を利用したゲラニルカルバゾールの合成を試みた。すなわち、オオバゲッキツ新鮮葉部由来の酵素群の存在下、ヒドロキシカルバゾールとゲラニル二リン酸の反応を検討したところ、LC-MS分析により目的化合物と考えられるゲラニルカルバゾールのピークが確認された。本結果から、ゲラニル化酵素(群)が、非天然型カルバゾールを基質として受け入れ、酵素反応が進行し目的化合物が生成した可能性が示唆された。また、酵素反応前駆体である種々のカルバゾール誘導体は、マイクロ波加熱反応を利用することにより、シクロヘキサノンとアニリンからワンポットで合成することができた。さらに、植物あるいは誘導体合成で得られた化合物を用い、U251-MG 由来 CSC に対する駆逐作用を評価したところ、セスキテルペンラクトンの1つであるシナロピクリン類に活性を見出し、その構造と活性に関する知見を一部得ることができた。その他、植物の二次代謝産物の生合成に関与する酵素・遺伝子探索のため、予備実験として、ユキノシタ科植物アマチャ葉部を用いて次世代シーケンサーによる遺伝子発現の解析〈RNA Sequencing (RNA-Seq)〉を進めた。以上、これらの結果は、植物由来の新たな膠芽腫治療薬を開発において重要な知見となると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、植物由来酵素を利用して擬天然物を構築し、得られた化合物を用いて膠芽腫治療薬の開発を目的としている。事業初年度では、植物酵素群を利用した多種多様な擬天然型化合物合成研究を進めた。その結果、LC-MS分析からオオバゲッキツ新鮮葉部由来の酵素群が非天然型カルバゾールを基質として受け入れ、酵素反応が進行する可能性を見出すことができた。この結果は、本研究課題を円滑に進めるために重要な知見である。また、上述の酵素反応における基質となる種々のカルバゾール類を、マイクロ波加熱反応を利用することで簡便に構築し、現在、10種類以上のカルバゾール類を準備することができている。また、キク科アーティチョーク由来シナロピクリンおよびその誘導体、ツヅラフジ科オオツヅラフジ由来アポルフィン型アルカロイド類がU251-MG 由来 CSC に対する駆逐作用を有することを明らかにするなど、種々の有望な化合物を見出している。さらに、次年度以降の予備実験として、アマチャを用いた次世代シーケンサーによる遺伝子発現の解析研究、生体分子イメージング技術による血液脳関門透過性に関する研究を実施するための放射性同位元素標識したカルバゾールの合成研究を進めている。以上の成果を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として、植物酵素(群)を利用した多種多様な化合物構築研究を計画する。特に、これまでの研究で有望だと判断されるゲラニルカルバゾールの合成を進める。最初に、予備実験として、放線菌由来プレニルトランスフェラーゼを用いてカルバゾールやその類縁化合物のプレニル化・ゲラニル化を試みる。また、昨年度に引き続き本研究課題を円滑に進めるため、ユキノシタ科植物アマチャを用いた次世代シーケンサーによる遺伝子発現の解析研究を行い、アマチャの含有成分であるイソクマリンの生合成に関する遺伝子・酵素に関する知見を得る。さらに、研究代表者が植物から単離・誘導体合成によってこれまでに得ている植物由来化合物ライブラリーから、データベースを利用した機械学習や in silico 解析を進め有効な植物成分の探索を進める。一方で、これまでに有効とされるゲラニルカルバゾール、アポルフィン型アルカロイドなどの植物成分および誘導体を用い、膠芽腫高発現タンパク質と親和性を示す化合物の探索研究を計画する。また、生体分子イメージング技術による血液脳関門透過性評価の基盤を形成する。さらに、膠芽腫幹細胞への駆逐作用を有する化合物の探索を進める。
|