2023 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of a novel experimental system for the comprehensive understanding and quantitative risk assessment of drug-induced intestinal toxicity
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23H02656
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
前田 和哉 北里大学, 薬学部, 教授 (00345258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
水野 忠快 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (90736050)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 薬剤誘導性消化器毒性 / 小腸幹細胞 / 細胞内ATP / EGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬 / 下痢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医薬品の臨床試験における副作用の中で最も多い割合を占める消化器毒性について、ヒト/動物crypt由来小腸幹細胞およびその分化細胞を用いて包括的に予測可能な新規in vitro実験系および評価法を構築することを目指している。本年度は、分子標的治療薬によって引き起こされる重篤な下痢のリスクを評価する実験系として、3D培養した小腸幹細胞スフェロイドに薬物を暴露後の細胞内ATP減少および細胞外LDH漏出を測定する実験系を提案した。その実証として、EGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKIs)の中でも臨床での下痢の発症率が大きく異なることを本実験系が捉えられるかについて検証した。従来の腸モデルとして汎用されるCaco-2細胞を用いた場合は、いずれのEGFR-TKIsにおいても細胞内ATP減少は、高濃度(~100μM)の薬物暴露下においてもほとんど観察されなかった。一方、複数ドナー由来のヒトおよびサルcrypt由来小腸幹細胞の3D培養系を用いて実験を実施したところ、afatinibのような極めて高頻度に下痢を引き起こすことが知られているEGFR-TKIsでは、nMレンジの暴露で顕著なATP減少が観察された。またこのATP減少はLDH漏出に先駆けて起こることを見出した。また、EGFR-TKIsの阻害モードが可逆的な薬物については、一定時間薬物を細胞と暴露後、培地中から薬物を取り除くと細胞内ATPが回復するが、不可逆的な阻害をみせる薬物については、培地中から薬物を除去後もATPの回復が見られないことを見出した。これらの事実より、EGFR=TKIsが引き起こす下痢のリスクは、on target毒性であることを示唆することができた。また、薬剤誘導性の嘔吐・悪心のリスクの予測系の一つとして、enterochromaffin (EC)細胞由来のセロトニン放出能を提案し、EC細胞リッチなスフェロイド構築に成功した。今後、各種薬物の影響を観察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で、薬剤誘導性消化器毒性の1つである下痢リスクを予測可能な実験系の構築に成功し、EGFR-TKIsを複数用いた相対的な下痢リスクの予測結果が、臨床試験時における下痢発症頻度と相関することを見出すに至っている。さらに、悪心・嘔吐の実験系構築に向けて、EC細胞由来のセロトニン放出を予測可能な実験系を作出すべく、EC細胞が小腸全体に占める割合が低いことから、その割合を増やしてセロトニン放出を鋭敏にとらえるべく、EC細胞リッチな分化条件を最適化するに至っている。これらの点から、現在まで順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤誘導性の悪心・嘔吐の一機序であるEC細胞からの過度のセロトニン放出を定量化しうる実験系を用いて、各種分子標的治療薬の中で、悪心・嘔吐の発症頻度が大きく異なる薬を分離しうるかを検討するとともに、新たに、小腸上皮上のムチン層の崩壊による腸細胞の障害を検討しうる、ムチン層の密度・厚さを定量的に簡便に測定可能な実験系の構築を行い、薬剤誘導性の防御因子崩壊リスクを測定可能な実験系を構築する。 また、幹細胞の殺細胞活性を観察する実験系については、更に薬物の幅を広げ、一般化に耐えうるかを検証する。
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