2023 Fiscal Year Annual Research Report
チャネルにおけるイオン透過と非典型的膜電位依存性ゲーティングのカップリングの検証
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23H02667
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
久保 義弘 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 教授 (80211887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陳 以珊 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40757770)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イオンチャネル / イオン透過 / 非典型的膜電位依存性ゲーティング / カップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、これまでに、GIRK2チャネルのポアヘリックスのボトムに位置するThr151残基を変異させたT151A変異体およびT151W変異体は、劇的なイオン選択性の変化を示し、Li+等、通常透過しないカチオンが透過すること、過分極に伴い膜電位依存的活性化を思わせる内向き電流の緩徐な増加を示すことを観察した。イオン透過と電位依存的活性化のカップリングを検証する目的で、これらの変異体をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、二電極膜電位固定法により、過分極の様々な膜電位での内向き電流を、Li+, Na+, Methyl Ammoniumを透過イオンとして用いて記録し、その増加速度の解析を行った。その結果、以下の知見が得られた。 T151Aについて、(1) 増加相は、時定数が数100 ms の遅い成分と、時定数が数10 ms の速い成分でフィットできた。(2) どちらの成分も、典型的な膜電位依存性チャネルと異なり、時定数の膜電位依存性はごく弱かった。(3) -120 mVでの遅い成分の時定数は、Li+では247 ms, Mathyl Ammonium では137 ms と、透過イオンの種類による活性化速度の違いが観察された。 T151Wについては、Li+, K+, Csを用いて記録を行ったが、記録ごとのばらつきが大きく、透過イオンの種類による活性化速度の違いは結論できなかった。 また、上記以外に、イオンチャネルの活性化とイオン透過の制御に関する研究を推進し、GIRKチャネルの新規アンタゴニストに関する学会発表を行い、また、GIRKチャネル、TRPV1チャネル、THIKチャネルを対象とした論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も重要なポイントととなる、透過イオンの種類による電流の活性化の速度の違いが観察されたことは大きい収穫である。そのため、この知見を基に2024年度以降に研究を発展させることができると考えている。そのため、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の実験結果を踏まえると、以下の点についてさらなる検討が必要と考えられる。 (1)電流活性化の速い成分については、透過イオンの種類による差異が明確に判定できなかったため、膜電位固定の精度をさらに高めて正確に解析する必要があると考えている。 (2)T151W変異体では、細胞ごとのばらつきが大きく明確な結論を得ることが出来なかった。よって、発現レベルを揃える等の工夫を行う。 (3)過分極時に明確な緩徐な活性化があることは膜電位依存的な活性化があることを示すが、時定数の膜電位依存性が非常に弱いことが、予想に反して観察された。このことは、この緩徐な活性化の、イオン透過との直接のカップリング等の特殊性を示唆する。そのため、同じ透過イオンの濃度を変えることによる活性化速度の変化を解析する。 (4)さらに、他のポアヘリックス等の変異体についても解析を行い、網羅的知見を得る。 (5)2024年度、2025年度には、これまで膜電位固定下蛍光測光による過分極時の構造変化を解析する実験にも取り組む。
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