2023 Fiscal Year Annual Research Report
自閉スペクトラム症の新たな病態理解を目指した海馬神経回路形成メカニズムの解明
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23H02668
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 正晃 北海道大学, 医学研究院, 講師 (90518325)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | イメージング / 社会行動 / 発達障害 / 薬物治療 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に他者に対する感情と記憶に関する研究を進めた。まず正常マウスを用い、頭部固定下の社会相互作用課題時の顔面の表情をコンピュータプログラムで判別し、社会刺激提示時の表情の変化を解析した。実験では、頭部固定した被験マウスの目前にアクリルの箱を設置し、その中にオスまたはメスのマウスやプラスチック製のマウスのおもちゃを提示した。マウスの顔面を赤外線照明下でCCDカメラを用いて撮影し、それぞれの刺激を提示したときの変化を解析した。この成果を2023年12月に神戸で行われた第97回日本薬理学会年会・第44回日本臨床薬理学会学術総会で発表した。 これに加えて、遺伝要因と環境要因に基づく2つの異なる自閉スペクトラム症モデルマウスについて社会記憶を行動課題によって解析し、これらのモデルマウスが異なるタイプの社会記憶異常を示すことを明らかにした。また海馬ニューロンの樹状突起スパイン密度をゴルジ染色で解析し、一方のモデルマウスはスパイン密度の異常を示すが、もう一方のマウスは正常であることを明らかにした。この成果を2023年9月に東京で行われた第53回日本神経精神薬理学会年会と2023年11月に米国ワシントンDCで行われたSociety for Neuroscience Annual Meeting 2023で発表した。 海馬のカルシウムイメージングについては、樹状突起スパインの活動をイメージングする手法を確立した。この成果を2024年3月に北九州で行われた第101回日本生理学会大会のシンポジウム講演で紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの頭部固定下での社会相互作用時の表情解析系を確立し、1件の国内学会発表を行った。また遺伝要因と環境要因に基づく2つの異なる自閉スペクトラム症モデルマウスの社会記憶の異常を明らかにし、海馬ニューロンのスパイン密度の異常を明らかにした。この成果について1件の国際学会発表と1件の国内学会発表を行った。海馬のカルシウムイメージングについては現在進行中である。この成果について1件の国内学会招待講演を行った。以上のように研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は正常マウスと自閉スペクトラム症モデルマウスの表情の違いを明らかにする研究を進める。また生後発達期の海馬のカルシウムイメージングを進める。自閉スペクトラム症モデルマウスにおける社会記憶と海馬ニューロンの形態の異常が明らかになったことから、その機能的なメカニズムを明らかにするために、イメージングに加えて共同研究による電気生理学的な解析を行うことを検討している。
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