2023 Fiscal Year Annual Research Report
組織・個体の恒常性を支える脂肪を起点とした生体適応ネットワークの解明
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23H02675
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00596174)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 組織間相互作用 / 脂肪 / 生体恒常性 / 組織修復 / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物では、内因的・外因的要因による生体変動に対して組織・臓器が時空間的に相互作用し合いながら個体の恒常性を維持している。しかし、生体内の多様な組織がどのように生体変動を感知し互いに連動しながら個体恒常性を維持しているのか、その分子実体や制御メカニズムには不明な点が多い。本研究ではショウジョウバエ損傷上皮の再生をモデルとして、脂肪組織による上皮恒常性変化の感知・応答機構を明らかにすると共に、脂肪を起点とした組織間ネットワークが体内環境を組織再生に最適化する生体リモデリングのメカニズムを明らかにする。ショウジョウバエ上皮である翅原基に傷害を与えると、上皮の組織傷害を脂肪体(ショウジョウバエ脂肪組織)が感知して組織傷害に対する個体応答を駆動する予備的データを得ている。そこで当該年度は、上皮恒常性の変化に対する脂肪体の感知・応答メカニズムを明らかにするため、上皮損傷を引き起こした個体に対して脂肪体特異的なRNAiスクリーニングを実施し、損傷組織の修復・再生に異常を引き起こす因子を探索した。その結果、複数の分泌因子(炎症性サイトカインや抗菌ペプチドなど)の同定に成功した。重要なことに本研究計画立案のもとになる予備的データと一致するように、これらの因子群の受容体の発現を上皮組織で遺伝学的に抑制しても組織修復に影響を及ぼさなかった。このことから、本スクリーニングで同定した上皮傷害に応答し脂肪体から産生される因子群は上皮に直接作用しているわけではなく、生体内の他の組織・器官に作用し組織修復をシステミックに制御していることが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮の組織傷害に応答する脂肪体由来の分子を複数同定できたことで、脂肪による上皮恒常性変化の感知・応答の仕組みが見えつつある。また、これらの脂肪体由来の因子群は上皮組織には作用していない結果が得られたことで、脂肪体が生体内の複数の組織・器官と連携して組織修復を制御している生体応答が見えてきた。これらの結果を基にしながら、さらに解析を進めることで組織傷害に対する脂肪を起点とした生体の適応応答の理解につながる成果が期待できる。以上の理由から、本研究計画はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は脂肪体が感知する損傷上皮の因子を探索・同定し、その下流シグナル経路の解析を進めることで、上皮恒常性変化に対する脂肪体の感知・応答システムを明らかにしていく。また、上皮損傷を引き起こした個体において脂肪体由来の因子群が作用する組織・器官を明らかにするため、細胞・組織特異的なgal4系統、lex系統やQF系統を用いて脂肪体と相互作用する生体組織の同定と、その分子メカニズムを遺伝学的に解析していく。
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