2023 Fiscal Year Annual Research Report
抗ウイルス活性を有する多重特異性四量体分泌型IgA抗体の形成制御機構の解明
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23H02731
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
鈴木 忠樹 国立感染症研究所, 感染病理部, 部長 (30527180)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 四量体分泌型IgA抗体 / 抗ウイルス抗体 / 抗体医薬 / 多重特異性抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗ウイルス中和抗体医薬として複数種類の抗原認識部位を有する中和抗体が高い抗ウイルス活性を示すことが報告されており、単量体抗体の4倍の抗原認識部位を有する四量体型sIgA抗体の特徴を活用した多重特異性抗体を作製することができれば、抗ウイルス活性の高いsIgA抗体を作製できる可能性が考えられた。最近、我々は、四量体SIgA抗体は、二量体型IgA抗体と単量体型IgA抗体の重合により形成されるという発見に基づいて、異なるクローン由来の二量体型IgA抗体と単量体型IgA抗体をSC存在下で混合することにより、二種類の抗原認識部位を有する四量体型SIgA抗体を作製する技術を開発した。そこで、本技術を用いて、SARS-CoV-2スパイクタンパク質上の離れたエピトープを認識する2つの抗体(二量体と単量体)を組み合わせ単一抗体分子中に複数の抗原認識部位を有する四量体型二重特異性sIgA抗体を作製することにより、抗ウイルス活性が向上したsIgA抗体の実現可能性を検討した。抗S2抗体クローンを二量体型IgA抗体として、各抗RBD抗体クローンを単量体型IgA2m2抗体として発現させ、SC存在下で混合することにより、二重特異性sIgA抗体を合成及び精製した。 精製した二重特異性sIgA抗体をサイズ排除クロマトグラフィで分離したところ、四量体、二量体および単量体型の抗体分子のピークが確認された。sIgA抗体の多量体形成効率を評価するため、sIgA抗体検出ELISAを行ったところ、二重特異性sIgA抗体は抗体クローンの組み合わせによって異なる多量体形成効率を示し、二重特異性sIgA形成効率にはクローン依存性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗ウイルス二重特異性sIgA抗体の作製に成功しており、クローン依存性を見出している。今後、二重特異性sIgA抗体形成効率に関与する宿主因子の探索に繋げていく予定であり、順調に研究は進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 二重特異性sIgA発現細胞系を用いた四量体sIgA形成制御機構の探索 二量体IgA1産生細胞と単量体IgA2産生細胞の混紡培養による二重特異性キメラ四量体sIgAは、2種類の抗原を用いたサンドイッチELISAで特異的に検出できる。本年度も昨年度に引き続き、この混合培養系によるハイスループットスクリーニ ング系の開発を進める。
(2) 粘膜ワクチン免疫動物を用いた生体内多重特異性sIgAの探索 生体内で形成される多重特異性四量体sIgAの検証については、インフルエンザ ウイルスHA抗原とSARS-CoV-2スパイク抗原の2種類のウイルス抗 原を混合した二価抗原の経鼻粘膜免疫マウスモデルを活用する。二価抗原を経 鼻免疫したマウスから最終免疫後に鼻腔洗浄液と血清を採取し、 得られた鼻腔洗浄液と血清を用いて上述の二重特異性キメラ四量体sIgA検出 のELISAにてSARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの双方を認識することができる抗体の検出を行う。今年度は、昨年度までに採取した検体の 解析を実施する。
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