2023 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞老化の生理学・病態生理学的意義とその分子基盤の解明
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23H02736
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山下 政克 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (00311605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 祐子 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (10879711)
鈴木 淳平 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (20734239)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Innate CD8 T / Bach2 / Menin / IL-2Rb / IL-12R / IL-18R |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、腫瘍抑制因子MeninはT細胞老化・終末分化を抑制しており、その下流分子としてBach2を見出している。しかし、これらの結果はいずれもin vitro培養系を用いた研究によって得られたものであり、実際にT細胞におけるMeninやBach2の欠損が、in vivoでどのような影響を及ぼすのかは十分に解析されたわけではない。そこで、本年度はT細胞得意的Menin、Bach2の脾臓T細胞のシングルセルRNA解析を行った。その結果、T細胞得意的Bach2欠損ナイーブマウスの脾臓では、IL-18受容体(R)/IL-2Rb/IL-12R陽性のセントラルメモリー型自然CD8 T細胞(innate CD8 T細胞)数が著しく増加していることがわかった。Innate CD8 T細胞は、ヒト・マウスにおいて加齢と共に増加することが知られていることから、Bach2はCD8 T細胞老化・終末分化を抑制している可能性が考えられた。Innate CD8 T細胞の増加は、Menin欠損マウスにおいても認められたが、Bach2 欠損に比べて軽微なものであった。Innate CD8 T細胞数は、T細胞特異的Bach2ノックインマウスで減少したこと、ChIPシーケンスの再解析でIl18rap、Il12rb、Il12rb1/b2遺伝子座でBach2の結合が認められたことから、Bach2はIL-18R/IL-2R/IL-12Rの発現を直接抑制していると考えられた。わたしたちは、これまで腫瘍抑制因子MeninがBach2の発現維持に重要であること、IL-12IL-18がMeninの発現を誘導できることを見出している。このことは、Menin-Bach2-IL-2R/IL12R/IL-18R経路がフィードバック制御により発現を調節している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Menin-Bach2による終末分化(老化)CD8 T細胞の新たな分化制御経路を見出したこと、Menin-Bach2-IL-2R/IL12R/IL-18R経路がフィードバックループによるT細胞老化(終末分化)制御の可能性を見出したから、研究は概ね順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、Bach2欠損、Bach2ノックインマウスを用いてinnate CD8 T細胞の抗腫瘍免疫における役割について解析を進めている。今後は、リステリア感染モデルなどを用いて、innate CD8 T細胞の記憶CD8 T細胞分化について解析を進める予定である。 それに加え、新たに見出したMenin-Bach2-IL-2R/IL12R/IL-18R経路がフィードバックループによるT細胞老化(終末分化)制御機構の詳細を明らかにする目的で研究を進める。
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