2023 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive analysis of the differentiation and function of neoantigen-specific T cells
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23H02762
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
垣見 和宏 近畿大学, 医学部, 教授 (80273358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 由香利 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40866919)
長岡 孝治 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (80649799)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Tpex / Ttex / CRISPR-Cas9 / CRISPRスクリーニング / ネオアンチゲン / 腫瘍特異的T細胞 / TCR-T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍内で腫瘍抗原を認識したT細胞は、腫瘍による持続するTCRシグナルにより、エフェクターT細胞(Teff)から疲弊T細胞(Tex)へと分化する。Texは、さらに増殖能を保ったprecursorあるいはprogenitor exhaustedの状態にあるT細胞(Tpex)と、エフェクター機能を亢進する代わりに増殖能を喪失したterminally exhaustedの状態に陥ったT細胞(Ttex)に分けられる。腫瘍内TCRシグナルが持続する中でTpexからTtexへ分化するプログラムに介入し。細胞増殖とエフェクター機能の両者を持続させるためのカギとなる分子メカニズムを同定するために本研究を行った。 TpexからTtexへの分化を再現するために、マウス胃がん細胞株YTN16のネオアンチゲンmCdt1を特異的に認識するCD8陽性T細胞からTCR遺伝子をクローニングしてレトロウイルスベクターに組み込み、CD8陽性T細胞に遺伝子導入して、mCdt1特異的TCR-T細胞を作製した。このTCR-T細胞とYTN16細胞を繰り返し共培養して抗原刺激を持続させると、TCR-T細胞はLy108+Tim-3-のTpexからLy108-Tim-3+のTtexへと変化した(in vitro exhaustion model)。 マウスの腹腔内にYTN16細胞を播種して胃がんの腹膜播種モデルを作製した。腹腔内にmCdt1特異的TCR-T細胞を投与すると、投与後1週間程度は腫瘍増殖を抑制したが、その後T細胞のエフェクター機能の喪失と共に急速に腫瘍が増大した(in vivo exhaustion model)。 TpexからTtexへと変化するin vitroおよびin vivo exhaustionモデルにおいて、TCR-T細胞に対してゲノムワイドのCRISPRスクリーニングを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はTpexからTpexへの分化を安定して再現できるin vitroとin vivoの実験系を構築できたことから、次年度以降、腫瘍特異的CD8陽性T細胞の実際の腫瘍内微小環境課に近い状況でのゲノムワイドのCRISPRスクリーニング解析を可能にするシステム構築を完了できたことから、本研究はおおむね順調に進行している。 腫瘍特異的CD8T細胞において、ゲノムワイドのCRISPRスクリーニングを効率よく実施するため、理化学研究所sCAT (systematically Cas9-expressing transgenic)マウスの提供を受け研究に用いた。このマウスの脾細胞からCD8陽性T細胞を分離し、抗CD3/CD28抗体ビーズで刺激後にTCRα鎖β鎖遺伝子の定常部分に対するガイドRNA(gRNA)をエレクトロポレーションしてTCR遺伝子のノックアウト効率を検討した。コントロールには、Cas9蛋白質gRNA複合体(RNP)を用いた。RNPを用いたポジティブコントロールでは完全にTCRの発現をノックアウトできたが、Cas9トランスジェニックマウスにgRNAを導入したT細胞ではノックアウト効率が低かった。このマウスではCAG プロモーター制御下でhumanized Cas9を発現するため、組織でのCas9発現と比較してリンパ球でのCas9蛋白の発現が低いことが原因であると考えられた。現在リンパ球での発現が期待できるプロモーターを用いた新たなCas9トランスジェニックマウスの作成準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPRスクリーニングを効率よく実施するために、リンパ球(特にCD8陽性T細胞)でCas9蛋白を高発現するトランスジェニックマウスを作製するため、EFプロモーターの下流にCas9遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製する。しかしながら、Cas9トランスジェニックマウスの作製や使用に問題が生じても、CD8陽性T細胞に対してCas9蛋白のエレクトロポレーションあるいは、レンチウイルスべクターを用いたCas9遺伝子導入によって、CRISPR-Cas9による遺伝子編集技術によるゲノムワイドのCRISPRスクリーニングを実施する予定である。 マウスではネオアンチゲン(Cdt1)特異的TCR-T細胞を用いたTpexとTtexの解析系が構築できたので、令和6年度は、ヒト患者の腫瘍由来のネオアンチゲン特異的TCR-T細胞を用いたTpex/Ttex解析系を構築する。すでに肺がん患者のネオアンチゲンを同定し、そのTCR遺伝子も同定済みであることから、レトロウイルスベクターを用いてヒト末梢血CD8陽性T細胞に遺伝子導入してTCR-T細胞を作製する。in vitroでのネオアンチゲンペプチドを用いた抗原刺激によりTpexからTtexへの分化を促し、CRISPRスクリ-ニングを可能にする。PBMCに対してレトロウイルスベクターを用いてTCR遺伝子導入を行うと、内因性のTCRとのミスペアリングが生じるため、TCRシグナルが減弱する可能性がある。その場合は、TCRα鎖β鎖をTCR遺伝子領域にノックインすることで内因性のTCRの発現を妨げ、導入するネオアンチゲン特異的TCRのみを発現するTCR-T細胞を作成して、CRISPRスクリーニングを実施する。
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