2023 Fiscal Year Annual Research Report
独自の改良型子宮内膜オルガノイドを応用した着床機構および着床不全の病態の解明
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23H03043
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
杉野 法広 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10263782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 功 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40610663)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 子宮内膜 / 脱落膜化 / オルガノイド / 着床 / 着床不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
着床とは、胚が子宮内膜上皮に接着・浸潤し、子宮内膜間質細胞の脱落膜化とともに胎盤を形成する過程である。ヒトではこれを再現するモデルが確立されておらず、着床機構の詳細や着床不全の病態は十分に解明されていない。本研究では、我々が独自に開発した子宮内膜オルガノイド(ミニ子宮内膜)とマウス胚盤胞を共培養することで、より生体に近い着床現象を再現できるin vitro着床モデルを確立する。さらに、着床関連遺伝子のノックアウトマウスから作製したミニ子宮内膜を用いて着床不全モデルを作製する。 1)ミニ子宮内膜を用いたin vitro着床モデルの作製 マウスミニ子宮内膜とGFPマウスから採取した胚盤胞の共培養を行い、下記の着床現象の4つのステージを経時的に組織切片を作製した。また、タイムラプスイメージングを用いてリアルタイムで観察する系を確立することに成功した。①attachment、②invagination、③entosis、④invasion。さらに、ステージ③④では、胚盤胞由来成分のうち栄養外胚葉が上皮に接着し間質細胞層に浸潤しながら絨毛細胞へと分化するが、この分化を分化マーカー(Proliferin)の免疫染色で確認した。また、間質細胞は絨毛の浸潤部位から脱落膜化変化を起こすので、この変化を脱落膜化マーカー(COX-2)の免疫染色で確認した。すなわち、浸潤した栄養膜細胞は絨毛細胞に分化、周囲の間質細胞は脱落膜化細胞に分化しており、着床後に胚盤胞から胎盤を形成するまでの観察も可能となった。 2)着床不全モデルの作製 上皮に発現する着床に必須な因子であるLIFのノックアウトマウスから作製したミニ子宮内膜では、着床現象が阻害されるかをタイムラプスイメージングで観察する。令和5年度は、金沢大学疾患モデル総合研究センターから譲渡されたマウスの交配によりLIFノックアウトマウスを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜上皮細胞と子宮内膜間質細胞を3次元培養した報告は過去にもあるが、体外で一連の着床現象を再現した報告はこれまでにない。その要因としては3次元培養にマトリゲルが必要であることや、上皮の極性が内側に向かい胚盤胞との共培養が困難であったことが挙げられる。我々が作成したミニ子宮内膜は①内部に子宮内膜間質細胞が充満されその外側に上皮細胞が覆っており、②上皮細胞のムチンタンパク質(MUC1)が上皮細胞の外側面に位置しているため胚盤胞を受容できる構造となっており、③培養にマトリゲルを必要としない点を以って体外での着床現象の再現を可能とした。また、共焦点タイムラプスイメージングを用いることで着床の4ステップをリアルタイムに追うことができ、これまでは静的評価のみであった着床現象の動的評価を可能とした。さらに、浸潤した栄養膜細胞は絨毛細胞に分化、周囲の間質細胞は脱落膜化細胞に分化しており、着床後に胚盤胞から胎盤を形成するまでの観察を可能にした。したがって、マウスの子宮内膜に類似した3次元構造体であるミニ子宮内膜を樹立し、体外で一連の着床現象を再現することができるin vitro 着床モデルの作製に成功した。 上皮に発現する着床に必須な因子であるLIFのノックアウトマウスから作製したミニ子宮内膜を用いて着床現象が阻害されるかをタイムラプスイメージングで観察するまでには至っていないが、LIFのノックアウトマウスは、すでに作製しており、研究の準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、1)ヒトミニ子宮内膜を用いたin vitro着床モデルの作製、2)着床不全モデルの作製を行う。 1)ヒトミニ子宮内膜を用いたin vitro着床モデルの作製 本研究では、ヒト人工胚盤胞(ブラストイド)を用いるが、これは、ナイーブ型iPS細胞から誘導して作製する。この方法については、この分野の専門家である山口大学生化学講座の清木誠教授からの指導を受け迅速に進める。また、準備段階の研究として、ヒト子宮内膜から子宮内膜オルガノイドを作製し、マウス胚盤胞との共培養により、マウスと同様に着床現象をin vitroでリアルタイムに観察する系を確立しておくことで、ヒト子宮内膜とブラストイドのin vitro着床モデルの作製を順調に進められるようにする。 2)着床不全モデルの作製 我々が同定した脱落膜化に重要な転写因子であるCEBP-beta をノックアウトさせた子宮内膜からもミニ子宮内膜を作製する予定としている。C/EBP-betaのノックアウトマウス作成については、ゲノム編集技術により作製する予定としているが、この技術は山口大学分子細胞生理学講座(宮本達雄教授)の指導をうけることで、迅速に進めることにしている。
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[Journal Article] Combined histological and DNA methylome profiling approaches may provide insights into the pathophysiology of ovarian endometriomas2023
Author(s)
Maekawa R, Ota Y, Ota I, Mihara Y, Takasaki H, Sato S, Tamura I, Shirafuta Y, Shinagawa M, Fujimura T, Shiroshita A, Yoneda T, Kawamoto-Jozaki M, Matsui F, Taketani T, Sugino N
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Journal Title
Med Biol
Volume: 22
Pages: e12548
DOI
Peer Reviewed
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