2023 Fiscal Year Annual Research Report
口腔バイオフィルム感染症制御法確立のための新規ターゲットタンパクの解析
Project/Area Number |
23H03115
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 周平 岡山大学, 大学病院, 講師 (10589774)
稲葉 裕明 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (70359850)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | バイオフィルム / Streptococcus mutans / ABC膜輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
齲蝕原生細菌 Streptococcus mutans は歯面に強固に付着し菌体外マトリックスを生成し, 厚いバイオフィルムを形成する。歯面に付着したバイオフィルム形成菌は, 浮遊菌と比較して抗菌薬耐性など違った性質を持つことが知られている。本研究では, バイオフィルム形成菌における遺伝子発現を RNA シーケシングを用いて調べ, そのメカニズムに関連していると推定される遺伝子を抽出した。6 穴細胞培養用マルチウェルプレートを用いてバイオフィルムを形成させ、バイオフィルム形成菌および浮遊菌を採取した。精製した RNA の断片化を行い, mRNA から cDNA ライブラリーを作製し、ディープシークエンスを行い, S. mutans UA159 株の既知の配列をもとにしたマッピングにより, 遺伝子の発現状況を確認した。バイオフィルム形成菌と浮遊菌の遺伝子の発現量は, バイオフィルム形成菌では,浮遊菌 と比較して、ABC 膜輸送体、フルクトースやマンニトールなどの糖の細胞内への取り込みに関する遺伝子の発現が上昇していた。一方で、浮遊菌ではバイオフィルム形成菌 と比較して、リン酸基転移酵素やタガトース-6-リン酸加水分解酵素などの遺伝子の発現が上昇していた。これらのことは、バイオフィルム形成菌では、バイオフィルムの構造維持のためのタンパクの発現が上昇し、浮遊菌では、菌の代謝に関連し、生命を維持するためのタンパクが機能していることが示唆される。今後は抽出した遺伝子の機能解析を進めていくことにより, これらの遺伝子がバイオフィルム形成にどのような影響を与えるかを解明し, バイオフィルムの破壊および再形成を抑制する新たな方法の発見を目指していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた遺伝子の抽出が終了し、今後はそれらの機能解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. スクリーニングされた表層病原タンパクの遺伝子変異株の作製: ターゲットとなる表層タンパク遺伝子欠失変異株および欠失させた表層タンパクの遺伝子を挿入したシャトルベクターを用いて遺伝子の発現を回復させる相補株の作製を行う。 2. スクリーニングされた表層病原タンパクのリコンビナントタンパクおよび抗血清の作製: 最終的に、どのような形でバイオフィルム形成を抑制し予防法につなげるかを検討するためにリコンビナントタンパクを作製し、それに対する抗体を作製する。 3. スクリーニングされた表層病原タンパクのバイオフィルム形成に関する役割および抗体を用いた抑制効果の検討: スクリーニングされた表層タンパクに関して、上記で得られた遺伝子変異株を用いてバイオフィルム形成能の評価を行う。評価は量的評価および構造評価を行う。
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