2023 Fiscal Year Annual Research Report
老化による脳機能低下のエピゲノム制御と運動リハビリテーション介入の基盤技術構築
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23H03248
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
植木 孝俊 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60317328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10452947)
植木 美乃 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40467478)
井上 浩一 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80345818)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 髄鞘 / FGF21 |
Outline of Annual Research Achievements |
R5年度では、老齢マウス(C57BL/6Jマウス18ヶ月齢)と高齢者の健常者(70-80歳)、70歳の軽度認知障害(MCI)患者)で、老化脳、特に高次脳機能を司る前頭前野の機能低下に与る髄鞘とオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の障害が、運動に伴い筋で産生されるmyokineの一種、FGF21のエピジェネティックな遺伝子発現抑制によることを検証した。そのため、下記①、②の実験を行った。 ① FGF21遺伝子DNAのメチル化と血中FGF21濃度の解析 老齢マウスと高齢者の血液サンプルを採取し、FGF21遺伝子DNAのメチル化状態をバイサルファイトシークエンスにより解析する。研究代表者らは既に健常高齢者(70-80歳)と老化モデルマウス(SAMP8マウス)にて、若齢者、若齢マウスと比較し有意にDNAメチル化が亢進していることを観察済みであり(投稿準備中)、ここでは、自然加齢マウスと高齢者(健常者とMCI患者)の血液サンプルで、DNAメチル化を解析するとともに、ELISAにより血中FGF21濃度を定量し、老化脳でFGF21遺伝子DNAが過メチル化される結果、FGF21産生が抑制されることを確認した。さらに、高齢の健常者とMCI患者でFGF21遺伝子DNAのメチル化状態を比較解析し、脳病態の病理に過メチル化が与ることを見出した。 ② 運動負荷後の血中FGF21濃度解析 MCIなどの老化脳病態患者で運動負荷による病態の予防と改善が図られることに鑑み、運動負荷による血中FGF21濃度の変動を、高齢の健常者とMCI患者の血液サンプルを採取しELISAで定量した。そして、①でのDNAメチル化状態が運動による筋のFGF21産生と連関することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず、老齢マウス(C57BL/6Jマウス18ヶ月齢)と高齢者(70歳以上の健常者、70歳以上の軽度認知障害(MCI)患者)で、①FGF21遺伝子DNAのメチル化度合、②FGF21産生量、③FGF21産生の運動応答性、④前頭前野における髄鞘とOPCの障害の連関を解明する。次に、老化脳における髄鞘とOPCの障害の分子基盤を、⑤FGF21遺伝子DNAの過メチル化と脱メチル化の分子病理、⑥MCI患者の同遺伝子DNAの過メチル化の分子病理、を探究することにより解明する。終わりに、老化脳病態の予防、改善を、⑦FGF21遺伝子DNAの脱メチル化とFGF21産生の増進に機能する食品、栄養素の探索、⑧同食品、栄養素の摂取が老化に伴い障害されるFGF21産生と前頭前野の髄鞘、OPC、並びに、前頭前野機能に及ぼす影響の検討、によって図る。 R5年度では、老齢マウス(C57BL/6Jマウス18ヶ月齢)と高齢者(70-80歳の健常者、70-80歳の軽度認知障害(MCI)患者)で、老化脳、特に高次脳機能を司る前頭前野の機能低下に与る髄鞘とオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)の障害が、運動に伴い筋で産生されるmyokineの一種、FGF21のエピジェネティックな遺伝子発現抑制によることを検証した。そして、自然加齢マウスと高齢者(健常者とMCI患者)の血液サンプルで、DNAメチル化を解析するとともに、ELISAにより血中FGF21濃度を定量し、老化脳でFGF21遺伝子DNAが過メチル化される結果、FGF21産生が抑制されることを見出した。このことから、本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢者、老齢マウスで観察されるFGF21遺伝子DNAの過メチル化は、同遺伝子DNAの転写調節領域に結合し、脱メチル化するPPARαの不活性化によることが、研究代表者らの老化モデルマウス(SAMP8マウス)でのghrelinによるPGC1αの活性化と、それに続くPPARαの活性化実験の結果、示唆された。PGC1αはPPARαに結合し、PPARαを活性化する。本研究では、PPARαに加え、PPARαの活性化に与るPGC1αとKetoA、さらに、PGC1αの活性化に与るSirt1とNADの動態を生化学的に解析する。ここで、PPARαは、植物油などに含まれるリノール酸の代謝物であるKetoAにより活性化され、一方で、PPARαの活性化に与るPGC1αは、腸管ホルモンghrelinや種々の食物に含まれるNADが、脱アセチル化酵素Sirt1を活性化することにより活性化される。 本研究では、健常高齢者(70-80歳)の血液サンプルを採取し、LC/MS/MS分析により血中のKetoAとNADの濃度を若齢者(20-30歳)と比較解析する。また、老齢マウス(C57BL/6Jマウス18ヶ月齢)の血液サンプルでヒトと同様にKetoAとNADの血中濃度を定量し、若齢マウス(8ヶ月齢)と比較する。さらに、老齢マウスより筋肉組織を採取し、PPARα、PGC1α、Sirt1の活性を生化学的に解析する。これらの実験から、FGF21遺伝子DNAの過メチル化が、リノール酸-KetoA- PPARα系、NAD(もしくはghrelin)-Sirt1-PGC1α- PPARα系の不活性化によるPPARαの脱メチル化活性の抑制に原因することを検証する。
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Research Products
(2 results)