2023 Fiscal Year Annual Research Report
運動により高まる脳機能の長期維持機構の解明とその応用
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23H03272
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
冨賀 裕貴 福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (50826394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
高橋 宏和 佐賀大学, 医学部, 特任教授 (20607783)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 運動 / 海馬 / エピジェネティクス / うつ・不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動は抗うつ・不安効果をもたらすことはよく知られている。さらに、うつ病患者に対する運動療法は、薬理療法に比べて、寛解後のうつ病の再発率が顕著に低い。したがって、運動の効果は長期的に維持され、うつ・不安に対する耐性を生体に刻み込み、将来的な精神疾患の発症を予防している可能性が示唆される。 この分子メカニズムを明らかにするため、本年度は実験計画①自発走行運動モデルによる抗うつ・不安効果維持機構の検討、②運動による抗うつ・不安効果維持に係るエクサカインの探索に着手することを目的とした。 実験計画①では、C57BL/6Jマウスを対象として、自発回転ホイールによる4週間の運動トレーニングモデルを作製した。次いで、4週間の運動トレーニングの後、2週間、あるいは4週間、回転ホイールの設置されていない通常ケージで飼育する、2条件の運動停止モデルの計3群の作製が完了した。屠殺後に得られた脳(海馬組織)より、total RNAおよびDNAを抽出した。これまで申請者が着目してきた遺伝子(Bdnf, Nos1)の発現量をqRT-PCRにより評価した結果、4週間の運動トレーニングにより増加する遺伝子や減少する遺伝子は、運動停止後にその発現が変化する可能性が示唆された。またNos1については、運動群、運動停止後2週間群、運動停止後4週間群において、遺伝子発現の変動とパラレルにDNAメチル化レベルが変動していた。以上の結果から、運動により獲得されたエピジェネティックな変化が、将来的なうつ・不安の発症に貢献している可能性が示唆された。実験計画②については、現在も進めている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
科研費採択と同時に現所属に異動となったため、実験環境のセットアップに多少の時間を要した。そのため、当初計画していた血液中のプロテオーム解析まで進めることができず、運動の長期維持効果に貢献するエクサカインの探索には着手することができなかった。以上の理由により、現在までの進捗状況は、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の計画は、令和6年度には確実に着手可能である。また当初の計画に加えRNA-seq解析による海馬mRNA発現の網羅的評価を年度末に準備した。そのため、運動による抗うつ・不安効果の長期維持に関与する新規海馬遺伝子の候補を令和6年度5月中に同定できる見込みである。次に当初計画していた運動効果の長期維持に寄与する血中因子の探索に進むことが可能である。令和6年度には、これらの血中因子のうち、神経芽細胞種細胞株を用いて、機能解析を行った後、組み換えタンパク質の慢性・急性投与が運動による抗うつ・不安効果を延長するかどうかを検証する。
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Research Products
(3 results)