2023 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間コミュニケーション因子であるエクソソームによるサルコペニアの発症機序の解明
Project/Area Number |
23H03274
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
川西 範明 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (00706533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 克彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80344597)
町田 修一 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 教授 (40421226)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | エクソソーム / 免疫細胞 / サルコペニア / 骨格筋 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢は骨格筋の萎縮(サルコペニア)を生じさせるが、この病態発症の分子機構の全容は不明である。本研究ではサルコペニアの発症や運動による予防効果の分子機構について、免疫細胞由来の分泌エクソソームによる細胞間コミュニケーションの役割に着眼して検証することを目的とする。 2023年度は、加齢および不活動が骨格筋由来の分泌エクソソームの性質の変化に及ぼす影響を検討した。具体的には、3カ月齢の若齢マウスおよび27カ月齢の高齢マウスから摘出した骨格筋を培養して、培養液中に分泌されるエクソソームを回収した。また、ギプス固定を14日間負荷した不活動モデルマウスの骨格筋由来の培養液からもエクソソームを回収した。エクソソームに含まれるRNAを抽出した後に、マイクロRNAおよびmRNAの発現を次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析した。その結果として、加齢により骨格筋由来の分泌エクソソームに含まれるマイクロRNAおよびmRNAの発現プロファイルが著しく変動することを見出した。また、不活動群と対照群での骨格筋由来分泌エクソソームに含まれるRNA発現の比較を行い、20種類程度のマイクロRNA発現量に違いがあることを見出した。加えて、Gene Ontology解析により発現変動したマイクロRNAは細胞増殖やタンパク質代謝などの機能活性を制御することが明らかになった。 さらに、不活動モデルマウスの骨格筋から酵素分散法により単核細胞を単離して、磁気分離法によりマクロファージなどの免疫細胞を回収した。免疫細胞を24時間培養した後に、培養液中に分泌されるエクソソームを回収して、ナノ粒子トラッキング解析により粒子径を評価した。現在は、免疫細胞由来の分泌エクソソームに含まれるRNAの網羅的な発現解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋由来の分泌エクソソームに含まれるマイクロRNAおよびmRNAにおいて、加齢や不活動により特異的に発現変動をする分子種を明らかした。また、酵素分散法および磁気分離法を用いて骨格筋から回収したマクロファージなどの免疫細胞から分泌されるエクソソームのRNAを対象とした網羅的発現の解析法を確立することで、単一細胞レベルでの分泌エクソソームの性質の変動の評価が実現することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに加齢や不活動により骨格筋および骨格筋に局在する免疫細胞から分泌されるエクソソームの性質が変動することを明らかにした。今後は、免疫細胞由来の分泌エクソソームが骨格筋機能を制御するという仮説を立て、実験的に検証する。細胞培養実験では、マウス骨格筋由来の初代サテライト細胞を培養して、加齢や不活動のモデルマウスの骨格筋の免疫細胞由来エクソソームを添加する。添加後にサテライト細胞の増殖能や分化能、糖取り込み機能を評価する。生体実験では、骨格筋の免疫細胞由来の分泌エクソソームの骨格筋機能への影響を検証する。具体的には、健常マウスに加齢および不活動モデルマウスの免疫細胞由来エクソソームを静脈内に複数回投与した後に、筋重量および糖取り込み機能を評価する。また、サルコペニアの病態発症に関与する骨格筋の線維化および脂肪蓄積を評価する。
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