2023 Fiscal Year Annual Research Report
複雑運動の遂行と知覚を促進するエキスパート特異的な体性感覚抑制機能の解明
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23H03300
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | NeuroPiano Institute (R&D Department) |
Principal Investigator |
平野 雅人 一般社団法人NeuroPiano(研究開発部), 研究開発部, リサーチグループリーダー (40852223)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 体性感覚 / エキスパート / 運動制御 / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
音楽家やアスリートなどエキスパートの共通点は“複雑な運動を素早く正確に行えること”である.楽器演奏は最たる例で,音楽家は複数の手指を正確な順序と力で高速に制御する.しかし,そのような運動中は各身体部位から入力される体性感覚情報が混線するため,ミスが生じ得る.本研究は申請者が新規に発見したエキスパート特異的な体性感覚情報の抑制機能が混線を抑制する機能的意義を持つとの仮説を検証し,当該抑制機能と複雑な運動の知覚や遂行能力との関係を解明することを目指す. 初年度は,ピアニストと非音楽家を対象とした神経生理実験と行動実験を実施した.神経生理実験では,尺骨神経へ微弱な電気刺激を与えると,その後に誘発される体性感覚誘発電位(SEP)が抑制されることを示した.この抑制はピアニストにのみ生じる現象であった.別の実験では,当該刺激を手指の受動的な運動と同時に与え,誘発される脳活動を刺激の有無で比較した.多変量パターン解析を用いて手指間における脳活動の空間パターンの距離を計算したところ,刺激を与えた条件ではその距離が増大した.また,dual-SEP法を用いて体性感覚情報処理における周辺抑制機能を定量化し,刺激の有無で比較したところ,刺激を与えた条件では周辺抑制機能が増強していた. 行動実験では,まず当該刺激が手指の系列運動に対する知覚に与える影響を調査した.外骨格ロボットハンドが手指を受動屈曲させる際,同時に刺激を与えると,より高速な運動であっても正確にその系列を知覚できるようになった.また,手指の複雑な系列運動の実行能力が刺激を与えると向上した.これらの効果はピアニストにのみ観察された. 以上の結果から,エキスパートに特異的にみられる抑制機能は,体性感覚情報処理における手指間の干渉を防ぎ,複雑・高速な運動の知覚や運動能力を高める機能的意義を持つことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は,ピアニストと非音楽家を対象にした神経生理実験と行動実験を次年度以降に予定していた分を含め全て遂行することができたため,計画以上に進展していると言える.次年度は当初の予定になかった両手運動を対象とした研究も進める.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施した研究で,ピアニストは複数の手指から入力される体性感覚情報の混線を防ぐ独自の抑制機能を有していることが明らかとなった.2024年度以降はさらに左右の手指間における混線・干渉を防ぐ機能が存在するかを調査し,両手運動技能との関連を調査する.特に,2024年度はピアニストと非音楽家を,2025年度は局所性ジストニア患者を対象とし,熟達と疾患の両側面から研究を進める.得られた研究成果は論文としてまとめ,国際学術誌へ投稿するとともに,国内外の関連学会にて発表することで広く結果を周知する.
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