2023 Fiscal Year Annual Research Report
人に快感情を与える「話しながらなでる」ロボットの実現
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23H03442
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高汐 一紀 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (40272752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神原 誠之 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10346306)
佐藤 弥 国立研究開発法人理化学研究所, 情報統合本部, チームリーダー (50422902)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ヒューマンロボットインタラクション / ソフトロボティクス / ソフトセンシング / 人間情報 / ユマニチュードケア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画初年度となる2023年度は、下記研究項目における議論を並行して進めた。
研究項目1:「なでる動作の力学的センシングおよび動作設計」に関しては、ストレスを抱えている際の腕の力みに即応して手を優しく握り返すロボットを提案した。鳥取県日南町国民健康保険日南病院にて実施されたフィールドワークの知見にもとづき、ロボットを抱える強さによりストレスの有無を判断する手法の提案と、ぬいぐるみ型ロボットのプロトタイピングを行なった。ロボットを抱える強さとストレスの関係性について検証するため、ストレス下と安静時でロボットを抱える強さを計測、比較を行った。結果として、ストレス下では、安静時に比べて弱い力でロボットを抱えていることがわかった。
研究項目2・3:「快感情を与える「話しながらなでる」動作の高度化」および「同動作の心理的評価」に関しては、これまでのロボットの触覚の知覚にはロボットの外観に大きく影響することが示されているため、「話しながらなでる」ロボットの外見 VR によって視覚的特徴を変化させ、その影響を調査した。本年度はステレオタイプ・コンテンツ・モデル(SCM)を用いて26人の参加者を対象に2部構成のユーザスタディを行い、その結果、印象が暖かいと認識される外見は、印象が冷たい外見よりも好かれ好まれることがわかった。さらに、ロボットによる「話しながらなでる」動作が,心理的影響のみならず,身体的苦痛の知覚を変化させるかを検証した。実験では,ゲートコントロール理論に基づき「なでる」動作と「話しながらなでる」動作に痛み知覚軽減効果があるのかを37 名の被験者による評価実験を実施した。その結果,「話しながらなでる」動作で痛み知覚軽減効果が示唆され,より快感情を与える「話しながらなでる」動作は「なでる」動作より痛み知覚軽減効果が大きいことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、医療における介抱や介護に代表されるような、人に快感情を与えるロボットの実現にむけて、人が無意識に行うことができる「話しながらなでる」動作を解析・検証・モデル化し、五感に訴えかけるマルチモーダルロボットインタラクションを実現することを目指している。
研究項目1:「なでる動作の力学的センシングおよび動作設計」に関しては、2023年8月から11月にかけて鳥取県日南町国民健康保険日南病院のスタッフ(医師、看護師、理学療法士、事務スタッフ)およびその周辺地域の協力を仰ぎ実施されたフィールドワークの知見にもとづき、議論を進めている。本年度は、フォトリフレクタとストレッチ生地を組み合わせたソフトセンサシステムを実装し、ストレス軽減や不安軽減を促すぬいぐるみ型ロボットに組み込み、一定の成果を得ることができた。
研究項目2・3:「快感情を与える「話しながらなでる」動作の高度化」および「同動作の心理的評価」に関しては、本年度実施多実験から、視覚的な外見がタッチ知覚に及ぼす影響の違いや、性別による嗜好の違いも見いだされた。このことは、VR 空間でのタッチケアロボットの外見が、ユーザとロボットとのインタラクションの全体的な知覚を変化させる可能性があることを示唆している。また、ロボットによる「話しながらなでる」動作の痛覚への影響をゲートコントロール理論に基づいた、痛み知覚の軽減効果の評価を行うなど、大きな成果が得られた。具体的には「ゲートコントロール理論に基づいた『話しながらなでる』動作は痛み知覚軽減効果があるのか」、「『なでる』動作とより快感情を与える『話しながらなでる』動作で痛み知覚軽減効果に差はあるのか」という2 つの仮説に対しともに支持される結果が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1:「なでる動作の力学的センシングおよび動作設計」に関しては、本年度の各研究項目での議論を受け、新たに「痛みに関する自己開示を促す対話ロボットの検討」を進めることとした。具体的には、本課題は、慢性的な痛みを抱える人を対象として、ユーザの違和感に気づく対話システムを構築することを最終的な目的とする。従来、先行研究の多くは見守りを目的とした雑談機能に注目しているが、痛みを聞き出すことに着目した研究は多くない。主観的な感覚である「痛み」を言語化して正確に伝えることなどの痛みに関する自己開示は困難である。そこで、ユーザとの日常会話から、ユーザが痛みを感じていることを検知して、痛みについて詳しく聞きとり、センシング情報と合わせて内容を記録、共有する対話システムの実装を目指す。
研究項目2・3:「快感情を与える「話しながらなでる」動作の高度化」および「同動作の心理的評価」に関しては、本年度実施した研究を発展させていく。具体的には、より多くのステレオタイプやジェンダー・バイアスを考慮に入れるために、参加者ごとに各ステレオタイプを個別に調査し、それに応じた暖かさ/有能さなどの印象の異なるアバターをデザインすることを考える。これにより、これらの効果の強さについてより大きな知見の収集を試みる。さらに痛覚への影響に関して、痛み刺激として電気刺激を採用したが、その他の痛み刺激に対しては検証していない。そこで、熱による刺激や圧力による刺激など様々な痛み刺激で実験を行うことを検討する必要がある。また、エンドエフェクタに関しては、より人のように柔らかい素材するなどの工夫が必要である。音声に関しては、心理的に良い影響を与えるほど痛み軽減効果は大きいと考えられるため、音声の内容や声質など要検討が必要である。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Delivery of pleasant stroke touch via robot in older adults2024
Author(s)
Ishikura, T., Sato, W., Takamatsu, J., Yuguchi, A., Cho, S.-G., Ding, M., Yoshikawa, S. and Ogasawara, T.
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Journal Title
Frontiers in Psychology
Volume: 14
Pages: -
Peer Reviewed
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