2023 Fiscal Year Annual Research Report
The theory of meaning via dependent type semantics and its automatic verification
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23H03452
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
戸次 大介 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (90431783)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 計算言語学 / 形式意味論 / 依存型意味論 |
Outline of Annual Research Achievements |
形式意味論において主流をなす理論はモデル理論的意味論であり、かつて1980 年代にはDRTやFCS、1990 年代にはDPLなど、革新的な枠組みが相次いで提案された。 ところがそれらの動的意味論は、いずれも意味論におけるもう一つの中心的パラダイムである合成性原理と折り合いが悪いことが徐々に明らかになった。この問題が未解決であったことが、2000 年代以降の形式意味論における「枠組み」についての議論の停滞をもたらした。すなわち形式意味論においてはすでに数多くの興味深い言語現象が発見されており,それはこれからも発見され続けるであろうが、標準的理論とされているモデル理論的意味論によって,これらの現象の蓄積を俯瞰的に予測・説明することは難しくなっているのである。 では、形式意味論において蓄積された言語現象を(ある程度であれ)俯瞰的に予測・説明しうる意味理論はそもそも存在するのであろうか? 本研究の第一段階は、この問いに肯定的に答えることである。自然言語の意味の理論として依存型意味論(DTS) を用いることで、自然言語の意味における動態と合成性を両立することができる。それによって、動的側面を伴う言語現象に対して統一的に分析を与え、より有機的に連動する分析群によって意味の全体像を捉えることを試みている。 本研究の第二段階は、DTS による意味の理論を実装によって自動検証することである。具体的な方法論として、日本語推論テストセットJSeM の構築と、依存型理論のための自動証明器の実装による意味理論の自動検証の研究がそれぞれ進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1. 弱交差現象(WCO) 2. VP削除 3. 時制(tense) 4. 自動定理証明の研究、の4課題に取り組む予定であった。このうち1.については、英語における主節WCOと関係節WCOの間には経験的な差があることをLFSに基づく厳密な検証によって示すことができ、国際学会LENLS20に採択されるなど大きな成果を得た(Fukushima+(2023))。2.については8月まで順調に研究を進め、DTSに基づく新しい分析に到達したものの、論文が採択に至っていない。3.については成果をまとめた論文が計算言語学の国際ワークショップIWCSに採択されるなど成果を挙げた(Matsuoka+(2023))。続く成果をJK31に投稿中である。4.については新たな設計に基づく実装が進んでいるものの、論文執筆には至らず、2024年度に持ち越している。 一方で、当初予定していなかった成果として、DTSによる意味表示を伴う日本語CCGツリーバンクの開発に取り組んでいる。この成果は自然言語処理のトップ国際学会の一つであるEACLのstudent research workshop (EACL-SRW 2024)に採択されるなど大きな成果を挙げた(Tomita+2023, 第二に、DTSによる意味分析と、現在主流であるdynamic plural semanticsによる意味分析を比較し、後者に固有の問題であるbinding problemが生じないことを示した論文が、国際学会AWPLに採択された(Yana+2023)。
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Strategy for Future Research Activity |
前項の1.についてはそのまま展開する。2.については(2024年度は適切な投稿先がないため)保留し、3.については一度完成したものとする。4.については海外のチームと連携することによって打開する予定である。 ReforgingによるCCGバンク構築、およびDTSとDSの比較研究についてもそのまま展開する。
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