2023 Fiscal Year Annual Research Report
自由エネルギー原理に基づく脳組織を用いた物理リザバー推論
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23H03465
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 宏知 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (90361518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯村 拓哉 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, ユニットリーダー (50802972)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 脳 / 神経細胞 / 推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①物理リザバー推論を実現できる閉ループ実験系を構築し、②実験データに基づき、脳組織の自由エネルギーの計算方法を確立したうえで、③脳組織の推論能力を増強する方法論を探求することを目的としている。初年度は、神経細胞の分散培養系において、情報処理容量と推論性能を評価することを試みた。また、情報処理容量や推論性能を向上させるために、複数の分散培養系をインタラクションさせる実験系を構築した。実験系には,2 mm角に1024点の電極からなる高密度CMOSアレイを用いた。本年度は下記の3つの成果を得た。 ①ノイズ付きリザバーの情報処理容量の評価方法に取り組んだ。その結果、自発活動による入力刺激を反映しないノイズ成分の存在が分散培養系の情報処理容量の値を大きく制限する要因になっていること、及びこの影響は 応答多様性の欠如、及びノイズの影響をともに考慮した情報処理容量の理論値から評価可能であることを示した。 ②神経細胞の分散培養系を対象とし、信号源の状態を推論する神経回路が持つ様々な情報処理性能を評価した。その結果、神経回路は自由エネルギー原理に従って信号源の状態を推論するように自己組織化するとともに、リザバーとしての情報処理性能を上昇させることが示唆された。 ③高速通信システムを構築し、神経細胞の分散培養系を接続し、リザバとして拡張することを試みた。その結果、リザバの規模が拡大することでリザバの独立な計測点が増え、またネットワークが複雑化することでより多様な入力応答が生まれ、情報処理容量が上昇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経細胞の分散培養系において、情報処理容量の評価、推論性能の評価、培養間通信システムの構築を実現したことから、初年度に目標としていた研究目的はおおむね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞の分散培養系の実験では、刺激条件数が限られてたため、今後、さまざまな条件において、情報処理容量や推論性能を調査する必要がある。また、本研究は神経回路による情報処理容量と推論性能の間に一定の相関があることを示唆したが、この両者の関係を調査するにはまず無意識的推論を起こす要因の特定と情報処理容量を向上させる要因を特定する必要がある。高速通信システムの開発では、トリガー電極や刺激電極の選び方、接続方法の決め方、刺激方法など、多くパラメータが存在する。リザバー性能や推論性能を向上させるうえでの最適なパラメータ決定の方法論を今後の研究で構築していく。
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