2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development and practice of pathway-specific N2O flux quantification method that enables matching of omics information with nitrogen fluxes
Project/Area Number |
23H03521
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
黒岩 恵 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00761024)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井坂 和一 東洋大学, 理工学部, 教授 (40543939)
諏訪 裕一 中央大学, 理工学部, 教授 (90154632)
木庭 啓介 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (90311745)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 15N トレーサー / 18O トレーサー / 亜酸化窒素 / 亜硝酸 / 脱窒 / 温室効果ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の基質が存在する条件での完全脱窒細菌(Alicycliphilus denitrificans strain I51およびAzospira sp. strain I13)のN2Oを含む中間生成物放出・除去フラックスの定量および基質毎のN2O転化率の算出を行った。炭素基質としてコハク酸、脱窒基質としてNO3-, NO2-, N2Oが共在する条件で、(1)N2O放出および除去速度, (2)放出N2Oにおける各基質の寄与率、を定量した。さらに、N2生成速度とその起源も定量し、(3)基質ごとのN2O転化率を評価した。この解析の結果、2種の脱窒細菌は特にN2生成に対する基質の選好性, NO2-放出速度, N2O放出速度について明らかに異なった傾向を示した。一方、放出N2Oは共通して主にNO2-に由来し、N2O転化率はNO2-でNO3-よりも7-21倍大きかった。このとき、NO2-のN2O転化率は、1.0-1.3%および32-85%と2種間で大きく異なった。この差は脱窒の逐次反応段階が連動して機能するか否かに起因すると推察され、今後活性測定と発現解析を同時に行う試験を実施することで検証する予定である。これらのN2Oを含む脱窒中間産物の動態解析結果は、N2OソースとしてのNO2-の重要性を強調しており、さらに、NO2-のN2O転化率は菌株により大きく異なりうることを示した。また、脱窒細菌がN2Oシンクとして機能するかソースとして機能するかは、存在するN2O以外の脱窒基質の種類や濃度に依存することがさらに強固にサポートされた。 一方、先行研究との整合性を検証するために、同一の材料について15Nトレーサーのみを用いたNO2-,N2O添加試験を行ったところ、NO2-がN2O生成・消費に与える影響は先行研究の報告と一致しなかった。この不整合については今後引き続き検証を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究において、当初予定通り、15N, 18Oを併用することで3種までの脱窒基質が存在する嫌気培養条件で、脱窒中間産物フラックスを定量するための手法を理論的に確立した。基質が2種までの場合、15Nトレーサー単一の試験で、N2O生成・消費・放出・除去の各速度に加え、最終生成物の生成速度とその由来を算出できる。そのための培養試験および解析手法を確立した。また、2種のトレーサー(15N, 18O)を用いることで、同様に3種の基質由来のN2O, N2放出フラックスを個別に定量でき、そのための計算過程の確立を行った。加えて、実際に3種(NO3-, NO2- ,N2O)の基質が共在する条件でのフラックスの定量解析を実施した。その結果、もちいた脱窒細菌の、高いN2O還元活性を有することが知られているAzospira I13株はNO2-が高濃度で存在する場合N2O吸収源ではなく放出源としてふるまうことが示されたが、これは先行研究での報告と矛盾した。複数種の基質が存在する場合、基質間の電子競合や阻害により、単一の基質を与えた場合と異なる挙動を示す可能性がある。そのため、既存研究との整合性の検証と、複数種の脱窒基質が存在する場合の影響を明確にするためにNO2-,N2Oと炭素基質のみを添加した試験を複数回行った。観測された脱窒動態は先行研究とは一致せず、これは先行研究では極めて高濃度のN2Oを付加した1日程度の前培養を行ったことでN2O消費活性が増強されていたためであると考えられた。このように、複数の反応が連続的に生じて進行する脱窒では、誘導の状態が性能評価にクリティカルな影響を及ぼしうる。そこで2024年度以降の研究では、菌体調整の基準を具体的根拠に基づいて設定したうえで、複数のN2O還元細菌単離株の性能比較を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は下記2点の内容を実施する。 (1)単離菌株のN2O放出・除去機能評価手法の標準化とN2O放出動態の違いをもたらすメカニズムの検証 まず、単離培養株のN2O放出・除去機能の評価において、複数の菌種の性能比較を行う際の試験手法を標準化する。これまでの試験で、脱窒の逐次反応の誘導状態が試験結果に大きな影響を与える可能性が示唆された。一方で先行研究ではprecultureやpreincubation条件が様々であり、さらに十分な記述や設定条件の根拠を欠く例が多く、結果の単純な比較が難しい。また、活性試験時の脱窒機能の発現の状態についても未測定であることが多く、細菌の生理状態が未定義であることが多い。本研究では実環境で期待される条件(基質種・濃度等)での機能評価と、比較を実現するために、precultureにおける菌体回収のタイミングについて、菌体増殖以外に生菌・死菌数および脱窒機能をモニタリングすることで、一律の基準を設ける。また、活性試験開始時の細菌懸濁液および、活性試験中の脱窒遺伝子発現量をモニタリングすることで、試験開始時の生理活性状態を定義するとともに、N2O動態の違いを引き起こす機序について詳細に議論する。 (2)微好気・好気条件でのN2O放出経路・フラックス解析手法の確立 開発手法では、N2の濃度・同位体比を測定する必要がある。CO2とN2Oの検出・分離が良好なカラムでは、N2, O2の分離が不良であるため、昨年度は嫌気条件での培養試験に限定して解析を行った。今年度はN2を排除しO2を含む混合ガス雰囲気下で土壌および微生物培養系のトレーサー試験を行うことで、適用可能な酸素濃度条件を明確にし、多様な酸素条件下でN2O動態を評価するための手法を確立する。現状の機器のセットアップで対応が困難である場合2つのカラムを同時に利用するための装置改良を加え、データを取得する。
|
Research Products
(3 results)