2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23H03524
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 哲弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60456902)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沢田 こずえ 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (60795285)
柴田 誠 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (40799607)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 土壌粘土鉱物 / 活性Al・Fe / 微生物群集構造解析 / 土壌生成学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機炭素蓄積メカニズムの異なる土壌を対象として、表面科学に基づく有機炭素-粘土鉱物界面の解析と、微生物群集組成および活性の解析によって、土壌ごとに異なる有機炭素蓄積ポテンシャルを明らかにする。さらに、土壌生成学に基づき、気候、地質情報から有機炭素蓄積ポテンシャルの空間分布を解明する。本年度は、インドネシア、タンザニアの多様な気候条件下における土壌を対象として、微生物群集構造を制御している因子を特定した。その結果、気候、特に土壌水分が、土壌pH、活性Al/Fe含量、土壌有機物の分解程度を通じて、細菌及び糸状菌の群集構造に強く影響していることを示した。これら微生物は、土壌有機物の分解を司るとともに、土壌有機物の給源ともなる。また、熱帯から温帯を対象として、土壌炭素含量を規定している要因を共分散構造分析によって明らかにした。下層では、活性Al/Feが有機炭素を安定化させる影響が直接かつ強かった一方、温度は活性Al/Feを介して間接的に影響していた。表層では、活性Al/Feによる有機炭素の安定化とともに、温度や土壌pHが微生物の活性を通して、同程度の影響の強さで有機物分解を制御していた。以上のように、表層と下層で異なる有機物安定化機構があることが示された。米国西部の土壌について、共分散構造分析に基づいて同様の解析を進めた。また、土壌有機物の分子構造の分析を進め、土壌有機物の蓄積状況とそれに対する気候および土壌特性の影響についての解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な気候環境下における土壌を対象として、細菌及び糸状菌の群集構造を規定する因子を明らかにした。また、温帯から熱帯の土壌について、土壌生成学の観点から土壌有機物の含量を制御する機構を解析し、表層と下層で土壌有機物が異なる機構で蓄積されていることを示した。2024年度以降に向けて、有機炭素分解の温度依存性の解析および安定同位体炭素を用いた有機炭素蓄積ポテンシャルの測定の準備も、順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
土壌中の有機炭素の蓄積を規定する因子についての解析を進める。これまでの解析により重要であることが判明した活性Al/Feについて、その分布を規定する要因の解明に、土壌生成学的手法をもちいて取り組む。また、安定同位体炭素で標識した有機物の土壌中での蓄積をトレースすることで、有機物の安定化の機構と蓄積のポテンシャルを明らかにする。さらに、土壌有機炭素分解の温度依存性を測定し、炭素蓄積ポテンシャルに対する温度の影響を検討する。
|