2023 Fiscal Year Annual Research Report
Prevention of Radiation-Induced Carcinogenesis by Senolytics
Project/Area Number |
23H03539
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
永根 大幹 麻布大学, 獣医学部, 講師 (10772064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 大輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, グループリーダー (00455388)
尚 奕 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線影響研究部, 主任研究員 (50533189)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 放射線 / 被ばく / 細胞老化 / 発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、乳腺細胞と肝臓細胞に対するセノリティクス候補化合物のスクリーニングを実施し、それぞれ数種類の有望な化合物を同定した。これにより、放射線による細胞老化機構の解明と老化細胞の除去による発がん予防の研究が進展した。 培養細胞系において、スクリーニングの結果、乳腺細胞と肝臓細胞でそれぞれ複数のセノリティクス候補化合物を同定することに成功した。この成果は、細胞老化に対する治療戦略の開発において重要なステップとなった。また動物実験では、BALB/c-Trp53 +/-雌マウスを用いた放射線誘発乳がんモデルを作成し、乳がんが生じる前の一見正常な乳腺組織(30週齢)を解析した。その結果、放射線被ばくによりIl-6などの炎症関連遺伝子が有意に増加していることを見出した。この結果は、老化細胞が放射線誘発乳がんの初期段階において炎症反応を引き起こす可能性を示唆している。B6C3F1マウスを用いた放射線誘発肝がんモデルを構築し、被ばく後の解析を行った。照射直後および300日齢以後にp21陽性細胞の割合が有意に増加したことを確認した。一方、p16陽性細胞率および炎症性サイトカインの発現には顕著な差が認められなかった。この結果から、肝臓における放射線誘発老化細胞の特徴とその発がんリスクに関する新たな知見が得られた。 これらの研究成果は、放射線による細胞老化機構の詳細な解明と、セノリティクスによる発がん予防の可能性を示唆するものであり、今後の研究の基盤となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、放射線による細胞老化機構の解明とセノリティクスによる発がん予防を目指しているが、現在までの進捗は順調であると判断している。その理由は以下の通りである。 まず、培養細胞系におけるセノリティクス候補化合物のスクリーニングが成功し、乳腺細胞および肝臓細胞に対して数種類の有望な化合物を同定できた。これらの化合物は老化細胞の選択的除去効果を示し、放射線誘発老化細胞の進行を抑制する可能性を示唆している。この結果は、放射線による老化細胞の除去を目指す新たな治療戦略の基盤を提供するものであり、研究の第一段階として重要な成果である。 次に、動物モデルを用いた実験においても重要な進展が見られた。具体的には、BALB/c-Trp53 +/-雌マウスを用いた放射線誘発乳がんモデルで、乳がんが生じる前の一見正常な乳腺組織において、放射線被ばくによりIl-6などの炎症関連遺伝子が有意に増加していることが確認された。この発見は、老化細胞が放射線誘発乳がんの初期段階において炎症反応を引き起こし、発がんリスクを高める可能性を示している。この知見は、放射線被ばくと乳がん発生のメカニズムを解明する上で重要であり、今後の予防策の開発に寄与するものである。 これらの結果を総合すると、培養細胞および動物モデルの両方において計画通りに進捗が見られ、放射線による細胞老化機構の解明とセノリティクスによる発がん予防の実現に向けた基盤が順調に築かれている。また、同定したセノリティクス候補化合物の効果をさらに検証し、老化細胞の除去が放射線誘発発がん予防に寄与する可能性を探る研究も進行中である。以上の進捗から、現在の研究が順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、放射線による細胞老化機構の解明とセノリティクスによる発がん予防を目指しており、これまでの進捗は順調である。今後の研究推進に向けて、以下の方策を実施する。 まず、同定されたセノリティクス候補化合物のさらなる評価を行う。これには、培養細胞系での追加試験および動物モデルでの効果検証が含まれる。特に、各化合物の最適な投与量と投与タイミングを決定するための詳細なドーズレスポンス解析を実施する。また、複数のセノリティクス候補化合物の併用効果についても検討し、相乗効果や副作用の軽減を目指す。 次に、動物実験における長期的な観察を継続する。BALB/c-Trp53 +/-雌マウスおよびB6C3F1マウスを用いたモデルで、老化細胞の動態とそれによる発がんリスクを詳細に解析する。特に、老化細胞の除去がどの程度発がん予防に寄与するかを明らかにするため、セノリティクス投与群と非投与群の比較を行う。また、老化細胞の除去による炎症反応の変化や、周辺組織への影響についても評価する。 さらに、放射線被ばくによる老化細胞の特異的なマーカーを探索し、これを用いた新規診断法の開発を目指す。特異的な老化マーカーの同定は、老化細胞の早期検出と除去に役立ち、セノリティクスの効果を最大化するための重要なステップである。このため、オミクス解析やプロテオミクス解析を活用し、老化細胞に特有の分子プロファイルを解明する。 最後に、国際的な研究連携を強化する。本研究分野における最新の知見や技術を共有し、グローバルな視点から研究を推進するため、国際会議やワークショップへの参加、共同研究の推進を図る。また、異分野の専門家とのコラボレーションを通じて、新たな視点や技術を取り入れ、研究の幅を広げる。
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[Presentation] Chronic inflammation through cellular senescence is a possible mechanism of radiation-induced mammary cancer in BALB/c-Trp53 +/- mice.2023
Author(s)
Haruka IZAWA, Mari OGAWA, Mayumi SHINAGAWA, Chizuru TSURUOKA, Yi SHANG, Masaaki SUNAOSHI, Hirotaka TACHIBANA, Takamitsu MORIOKA, Shizuko KAKINUMA, Tatsuhiko IMAOKA, Masaru TAKABATAKE, Daisuke IIZUKA
Organizer
日本放射線影響学会第66回大会
Int'l Joint Research
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