2023 Fiscal Year Annual Research Report
A structural elucidation technique of unknown substances with mass spectrometry, quantum chemistry, and chemical kinetics and its application to unknown growth substrates for pathogenic bacteria
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23H03559
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高梨 啓和 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40274740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春日 郁朗 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (20431794)
栗栖 太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30312979)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 未知環境汚染物質 / マススペクトル / 構造推定 / 量子化学計算 / 自動化 / 全経路探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、化学構造が未知な新規環境汚染物質の構造をガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)で推定するための「自動構造推定技術」の開発を目指して、その原理を確認して有用性を示すことである。そのために、量子化学と反応速度論を用いて、仮定した物質の構造からマススペクトルを予想する技術を構築する。 現在のスーパーコンピューターでは、本研究に必要な量子化学計算を実施するのに長時間を要するために、初年度は時間効率の高い計算方法を検討した。検討は、メタン、プロパンなどをモデル物質として実施した。その結果、当初計画していた非調和下方歪追跡-超球面探索(ADDF-SHS)法よりも人工力誘起反応(AFIR)法の時間効率が高く、さらに、発見される反応経路の偏りに問題は認められず、本研究に適していることが明らかになった。そこで、AFIR法によるフラグメンテーション反応経路の全経路探索を水道水生ぐさ臭原因物質の構造推定に適用したところ、物質を構成する原子数が多いことなどの影響で、1年間では計算が終了しなかった。このため、現状では、構成原子数が多い物質など、複雑な構造の物質の場合には、特定の反応経路に着目した別のアプローチが必要なことが明らかになった。 また、本研究に必要な分析種の内部エネルギーの推定方法を検討した。初年度は、プロパンをモデル物質として、中性種とラジカルカチオン種の最安定配座を求めてイオン化エネルギーを推定したところ、実測値と推定値の良好な一致を確認した。 さらに、本技術の有効性を示すために、緑膿菌や環境菌の増殖実験前後の試料や実環境水試料を対象に、高分解能GC/MSを用いた網羅分析を実施した。同試料から同定された物質のマススペクトルを説明可能であることを確認するために、同物質の構造を始原系にAFIR法でフラグメンテーション反応経路の一次的な全経路探索を終えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、メタン、プロパンおよび2-ペンタノンなどのラジカルカチオンをモデル物質として、ADDF-SHS法でフラグメンテーション反応の全経路探索を実施し、モデル物質で起こりやすいすべてのフラグメンテーション反応のエネルギーダイアグラムと振動数を得るとしていた。これに対して初年度は、メタン、プロパン、アラニノールおよび水道水生ぐさ臭原因物質を対象にAFIR法でフラグメンテーション反応の全経路探索を実施し、計算が終了したメタンについてはエネルギーダイアグラムと振動数を得て目標を達成した。 また、計算の効率化については、ADDF-SHS法とAFIR法を比較し、AFIR法が本研究には有利であることを見出して目標を達成した。さらに、高効率な計算手順の検討については、アラニノールをモデル物質に検討を実施し、当初計画の計算レベルの選択に加えてヘッセ行列の計算手順などについても検討して、目標を上回る成果を得た。長時間計算の必要性については、現状の計算機の性能では、構成原子数が多い物質などの複雑な構造の物質の場合には、長時間計算を実施して計算を完了するのは非現実的であり、特定の反応経路に着目した別のアプローチが必要なことを明らかにして目標を達成した。さらに、本技術の有効性を示すための検討については、緑膿菌や環境菌の増殖実験前後の試料や実環境水試料を対象に網羅分析を実施し、同定された物質の構造を始原系にAFIR法でフラグメンテーション反応経路の一次的な全経路探索を終え、目標を上回る成果を得た。一方、発見された反応の重要度を精査する方法については、計画していた検討が実施できなかった。 以上のように、目標を上回る成果を得た項目がある一方で、検討に至らなかった項目があるため、「おおむね順調に進展」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の検討で推進の妨げになったのは、大規模科学計算システムの利用における計算開始の順番待ち時間が長いことである。計算機の込み具合や計算jobの計算時間の設定状況によるが、研究期間の概ね半分程度が順番待ち時間であった。このような状況を改善すべく、大規模科学計算システムの1ノードあたりの演算能力と同程度のハイパフォーマンスコンピュータを研究室に導入し、さらに計算に必要なソフトウェアを導入した。今後は、大量に得られる計算結果の解析手法が問題になると予想される。大規模科学計算システムでの計算結果は、専用の解析ソフトウェアが利用可能であったが、自前で計算した結果の解析は不能である。現在、その解析を実行可能な解析ソフトウェアの開発が進んでいるので、上市され次第、導入を検討したい。また、高分解能GC/MSの機器トラブルへの対処も推進の妨げになった。そこで、高分解能GC/MSのメーカーによるメンテナンス作業を実施した。今後も、必要に応じてメンテナンス作業を実施したい。さらに、令和5年度から6年度にかけて、当研究室が入居している建屋の建て替え工事が行われる。その影響で、これまで一か所に集約されていた研究室が2つの建屋に分散され、研究の実施効率が低下すると予想される。その低下を緩和するため、計算機同士を接続して遠隔での計算を容易にするソフトウェアの導入を検討する。
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