2023 Fiscal Year Annual Research Report
若年層インスタント・メッセンジャー・コミュニケーションの経年変化と認知的失敗
Project/Area Number |
23H03675
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
桐谷 佳惠 千葉大学, デザイン・リサーチ・インスティテュート, 准教授 (00292665)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | モデル / インスタント・メッセンジャー使用 / 若年層 / 経年変化 / 行動特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,インスタント・メッセンジャー(IM)の使い方を縦断的に調査し,行動特性の観点から若年層IMコミュニケーション行動を説明することである。つまり, 1)若年層のI Mコミュニケーション行動は年齢で異なるのか,2)IMコミュニケーション行動は年を経ても維持されるのか,あるいは年齢が上がると変化するのか,3)同調や共感,認知的失敗傾向とIMコミュニケーション行動の関係,が判明する。 初年度である当該年度は,まず予備調査として若年層のIM使用実態を知ること,その上で今後の調査に使う質問紙を作成する準備を行うこと,加えて性格や行動特性を測る質問紙を準備した。IM使用実態調査は,大学1,2年生へのWEB質問紙調査を経て実態傾向を踏まえ,その後,15歳,18歳,21歳に対してインタビュー調査を行った。その結果,ツール使用開始時期やよく使われるものに加え,相手との親しさでツールを使い分けていること,年齢によるツールの使い方の差,やり取りに気を遣っている様子などが明らかになった。これらの結果は,IM使用を調査する質問紙を作成する際の指針となる重要なものである。 つづいて,実際に独自の質問項目を41項目作成し,15歳,18歳,21歳計300名に対してWEB質問紙調査を行った。その結果,項目に偏りや識別性の問題はなかった。因子分析の結果,4因子構造であることが判明した。 性格など行動特性については,先行研究で使用された共感性,同調性,認知的失敗の質問紙を使い,15歳,18歳,21歳計267名にWEB質問紙調査を行った。その結果,すべての項目で偏りや識別性の問題はなく,同調性と認知的失敗は先行研究と矛盾しない因子構造となったが,共感性は先行研究とは因子構造が異なった。 以上より,当該年度は,I Mコミュニケーション行動と行動特性を測定する質問紙作成の第1段階を終えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
若年層I M利用と性格特性について,4つの調査を行った。 まず,大学1,2年生141名を対象にI M使用のWEB質問紙調査を行った。その結果,LINE,Instagram,Xがよく使われるツールたが,親しい人にはLINE,それほど親しくない人にはInstagramも使う傾向がみられた。約88%の人が,15歳までにこれらのツールを使い始めていた。使い始めた頃と現在を比べると,慣れて使う機能に変化が起きたことに加え,より積極的になる方向とより消極的になる方向の二極化がみられた。 つづいて, 15歳10名,18歳5名,21歳12名に対しインタビュー調査を行った。その結果,よく使われるツールはLINEとInstagramで,前者はより親しい人,後者はそれほど親しくない人に使われる傾向があった。15歳ではこれらのツールはやり取りを楽しむために使われるが,21歳では必要事項連絡手段の側面が強くなった。多くが中学時代までにスマートフォンを使い始めるが,15歳では使用開始年齢が他の年齢より早かった。いずれの年齢でも,親や非常に親しい友人を除いて,誤解が生じないようやり取りの際にはとても気を遣っていた。 予備調査の結果を踏まえ,IMツール利用について独自に41項目作成し,15歳,18歳,21歳計300名に対してWEB質問紙調査を行った。その結果,項目に偏りや識別性の問題はなく,4因子構造(LINE使用,気遣い,絵文字・スタンプ,Instagram使用)が判明した。 さらにこの3年代計267名に対し,性格のWEB質問紙調査を行った。項目は,先行研究の共感性10,同調性15,認知的失敗25項目を使用した。その結果,項目の偏りや識別性に問題はなかったが,共感性の因子構造が先行研究と異なった。同調性と認知的失敗は先行研究と矛盾しない因子構造となり,今後の測定にも問題なく使えると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,IMの使い方を特定の年代で縦断的に調査し,性格特性の観点から若年層IMコミュニケーション行動を説明することである。研究仮説は,2つある。 H1:若年層のI Mコミュニケーション行動は年齢で異なる。つまり,若年層と一括りにすることはできず,同じ10代でも15歳と18歳では行動に差が出る。これは,集団規範が局所的に形成されるためである。H2:集団規範に従い同調行動が取られるが,その背景には認知的失敗があり,共感性も関係する。 H1検証のためには,毎年調査を行う。15歳,18歳,21歳の3つの年齢群にI M使用に関する調査を行う。同じ年齢群を数年間調査することで,同じ年齢でも調査年が違えばIMコミュニケーション行動は異なるのかがわかる。すでに行った調査結果を踏まえ,調査方法を柔軟に変更して行ってゆく。 H2検証はモデル構築と検証であり,現状,質問項目を仮決定し,3つの年齢群に質問紙調査を行い,因子構造を仮決定した状態である。今後は,対象者数を増やして,I Mコミュニケーション行動と行動特性を測定する質問紙を完成させる。つまり,3つの年齢群に質問紙調査を行い,項目分析,因子分析,信頼性分析を行う。その後は上述のI M使用に関する調査とともに,認知的失敗,共感,同調傾向測定の質問紙調査を行い,IMコミュニケーション行動,認知的失敗,共感,同調傾向の間の連関モデルを構築,検証を続けていく。 以上の調査から,H1として,若年層のI Mコミュニケーション行動は年齢で異なるのか,IMコミュニケーション行動は年を経ても維持されるのか,あるいは年齢が上がると変化するのか, H2として,集団規範に従い同調行動を取られるが,その背景には認知的失敗があるのか,共感性はどう関係するのか,が判明する。
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