2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KF0060
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SINGH MANPREET 九州大学, 工学研究院, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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Keywords | 量子センシング / 光励起三重項 / 多孔性金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年量子コンピュータや量子センシングといったquantum information science (QIS)分野が大きな注目を集めている。本研究では分子性の量子ビットを集積化した多孔性金属錯体(metal-organic framework, MOF)の合成と評価を行い、量子センシングへの応用を目指す。室温で生成可能な量子ビットとして、有機分子が励起状態で生成するスピン偏極を利用する。ポルフィリンを含む配位子を反磁性金属イオンであるジルコニウムイオンと組み合わせることでMOFを合成し、更にラジカル分子をMOF中に導入した。MOFの合成および構造は粉末X線回折測定により確認した。MOF中に発生される励起状態に関しては吸収、蛍光スペクトルおよび蛍光寿命測定により評価した、MOF中へのラジカル分子の導入はCW-ESR測定により確認できた。得られた複合体の過渡ESR測定により、偏極したラジカルの信号を観測することに成功した。これは光照射によってMOF中に生じた励起種がラジカルと相互作用することによってトリプレットとラジカルが強く相互作用したダブレットおよびカルテット状態を生成し、その後基底状態に失活することによってスピン偏極したラジカルを生じたものと考えられる。すなわちMOF中に量子ビットを光生成することに成功した。更に異なる構造のMOFにラジカルを導入して過渡ESR測定を行い、ラジカルの偏極信号の強度がMOFの構造に依存することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
色素を密に集積したMOFの合成および評価に成功した。更にはその色素集積MOF中にラジカルを導入し、光励起によりスピン偏極したラジカルの生成にも成功した。量子センシングの実現に繋がるMOF中での量子ビット生成に成功したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
MOF中の色素とラジカルの集積構造を最適化し、電子スピン偏極生成の過程の最適化を行っていく。更にはゲスト分子の導入が電子スピン物性に与える影響を検討し、量子センシングの実現に向けた検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも少ない物品費および旅費において研究を遂行することが出来た。次年度に必要な試薬等の物品購入および国際会議への参加のための旅費として支出する予定である。
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