2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23KJ0008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
細木 拓也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 種分化 / 交雑 |
Outline of Annual Research Achievements |
種はいかにして完成するのだろうか?種分化とは、一つの集団から互いに遺伝的交流のない二つの集団の分化に至るまでの連続的な過程である。種分化の過程では、常に二集団の分化が拡大する方向に進化が進むとは限らない。例えば、交雑は二集団を遺伝的に均一化し、それまでに進行した分化を逆行させる。一方で近年、いったん交雑しても、雑種集団が均一化したままではなく、二つの遺伝的に異なる集団に再度分離する二種も同定されている。交雑後も種間の遺伝的分化が維持される要因の追究は、二つの集団が、交雑しつつも生殖隔離が完全に成立した二つの種として確立するかどうか、すなわち種分化が完成しているかどうかを左右する要因が何であるかを理解する上で、重要な課題である。本課題では、「完全に均一化するか、それとも再分離するか」という対比的な帰結を決定する生態的・内因的要因を追求することを目的とし、雑種集団の集団遺伝学解析と野外進化実験を行った。 本年度では、第一に、岩手県大槌町の津波跡地に生息するイトヨとニホンイトヨ間の雑種集団から得た個体の全ゲノムシークエンスを実施することで、交雑の帰結に至る進化的要因をゲノムワイドに検証できる基盤が整った。第二に、北海道内でトゲウオ複数種が同所的に生息している地域から網羅的に標本を採集し、ddRAD-seqから雑種集団の検出を試みた。「完全に均一化するか、それとも再分離するか」という対比的な帰結に至った集団があるか、その原因は何であるか、追究する基盤が整った。第三に、人工進化実験を始動することに成功した。まず、北海道大学苫小牧研究林に淡水から汽水までの環境勾配を模した人工生態系を構築した。次いで、イトヨ・ニホンイトヨ種間の雑種を作成し、人工生態系に導入した。人工生態系内と野外集団の間にみられる共通点を探索することで、交雑の帰結に至る進化的要因を追究可能なシステムが立ち上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然環境下に存在する複数の雑種集団を対象とした集団遺伝解析に着手できたため。また、そのシークエンスを得ている過程にあるため。加えて、雑種の人工進化実験に着手でき、野外での進化パタンと人工進化実験の結果を比較可能な系を立ち上げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
岩手県大槌町の津波跡地に生息するイトヨとニホンイトヨ間の雑種集団について、シークエンスが得られ次第、ゲノムワイドな交雑パタンを推定する。次いで、北海道内でトゲウオ複数手段について、シークエンスが得られ次第、雑種集団の検出と、ゲノムワイドな交雑パタンを推定する。加えて、人工生態系に導入した雑種を回収し、ゲノム解析を実施するほか、再放流ののちに人工生態系内での自然繁殖を誘導し、人工進化実験に着手する。
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Causes of Carryover |
本年度実施予定であった次世代シークエンスの発注が、サンプル調達と調製に時間を要し、本年度内に実施できなかったため。ただし、本年度中に実験は既に完了しており、次年度早々に発注する見込みであるから、発注時期以外の使用計画に変更はない。
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[Presentation] 津波直後にみられたトゲウオ科魚類の種間交雑と引き続く異種ゲノムの排除機構2023
Author(s)
細木拓也, 森誠一, 西田翔太郎, 久米学,永野惇, 神部飛雄, 柿岡諒, 中本健太, 飯野佑樹, 小玉将史, 大場理幹, 石川麻乃, 山﨑曜, 北 野潤
Organizer
日本進化学会第25回沖縄大会
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