2023 Fiscal Year Annual Research Report
酸化チタン薄膜における金属絶縁体転移の機構解明と新規デバイス応用に向けた機能開拓
Project/Area Number |
23KJ0162
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長谷川 直人 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2024-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 角度分解光電子分光 / 金属絶縁体転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
コランダム型構造を持つ三酸化二チタン(Ti2O3)は、バルク体において、室温より遥かに高温の450 Kで、格子変形を伴った金属・絶縁体転移(MIT)を示す。このTi2O3は、MIT前後でコランダム型の結晶対称性が変化しない特徴的なMIT特性を示すことから高耐久性が期待でき、新規エレクトロニス材料への応用が期待できる。そこで、新規相転移デバイス応用に向けて①特異な電子物性の起源解明と②デバイス応用への設計指針の構築を目的として研究を行った。 本年度はその一環として、放射光を用いた先端計測と薄膜合成を組み合わせ、Ti2O3における電子相転移の発現機構を明らかにすることを目的として実験を行った。具体的には、茨城県つくば市の放射光施設Photon Factoryにおいて、軟X線角度分解光電子分光による詳細な電子状態解析を行った。特に、MIT前後におけるTi2O3薄膜のフェルミ面・バンド構造の温度変化を実験的に明らかにした。その結果、MIT転移温度付近から、フェルミ面のトポロジーを保ちながらホール面が徐々に拡大する特徴的なフェルミ面の変化を観測した。このフェルミ面の温度変化は、Hallキャリア密度および結晶のc軸長とa軸長の格子定数比(c/a比変化)とよい一致を示した。これらの結果から、Ti2O3の電子状態変化は格子変形に伴うフェルミ面の変化が起源であることが明らかになった。以上よりTi2O3における「MIT」が、c/a比変化に伴う半金属から半導体へのクロスオーバーであると結論づけた。
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