2023 Fiscal Year Research-status Report
Nd-Fe-B磁石の3次元磁区解析による保磁力起源の解明と極限性能への挑戦
Project/Area Number |
23KJ0190
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
諏訪 智巳 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | Nd-Fe-B磁石 / 磁区構造 / 微細組織 / 保磁力 / マイクロマグネティクス計算 / 3D解析 / 機械学習 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
Nd-Fe-B磁石は産業上重要な材料であり、これまで多くの研究が行われてきた。しかし、その保磁力の発現機構は未だ明確でなく、理論期待値の1/3程度に留まっている。そのため、磁区と微細組織を対応付けた磁化反転挙動を解析し、その関係を明らかにすることが重要である。本研究では、Nd-Fe-B磁石内部の同一視野領域の3次元磁区と微細組織から磁化反転挙動を解析することで保磁力機構の解明を試みる。 今年度は (1) 3次元磁区と微細組織の画像情報を用いた解析、(2) 熱間加工磁石の3次元磁区と微細組織の測定、(3) マイクロマグネティクス計算に向けたモデル作成を実施した。 (1)過去に測定された焼結磁石のデータを用いて磁区と微細組織の関係を画像情報から解析することを試みた。磁区の情報を反映させた微細組織の情報をHOGで特徴量化し、UMAPによる特徴量マッピングを行った。その結果、飽和領域と磁化反転領域で微細組織を区分することに成功し、人間の認識では認識しにくい微細組織の特徴を分類できる可能性を示唆した。 (2)磁石加工、硬X線磁気トモグラフィーによる3次元磁区測定、3次元SEMによる微細組織測定、および磁区と微細組織の統合を行った。結果として、同一視野領域の3次元磁区と微細組織の取得に成功した。特に、最小で10 kA/mという非常に小さな磁場ステップで、初めて磁区が測定され、わずかな磁化反転挙動を捉えることに成功した。 (3) 本取り組みは実験で得られた磁化反転挙動の詳細をマイクロマグネティクス(MM)計算により調査することを目的とする。実験データに基づくMM計算には、SEMデータからのモデリングが必要である。今年度は、モデリングに向けた主相および粒界相の抽出を試みた。画像フィルタリングなどの従来の画像処理技術を活用した粒子抽出では抽出が困難であり、新たな手法開発が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Nd-Fe-B磁石内部の磁化反転挙動を解析するために必要な、3次元的な磁区と微細組織の測定および統合に成功したため。このデータは、最小で10 kA/mという非常に小さな磁場ステップにおける磁化反転挙動を初めて捉えることができ、保磁力機構の解明に有用なデータとなっている。また、マイクロマグネティクス計算を用いて詳細な磁化反転挙動を解析するために必要な、微細組織のモデリングに関する新たな指針を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施した内容で、熱間加工磁石の3次元的な磁区と微細組織データの取得に成功した。2024年度はこれらのデータを基に保磁力機構の解析を行う。また、実験データとマイクロマグネティクス計算を統合して、より詳細な磁化反転挙動の解析を進める。2023年度の実施内容から、マイクロマグネティクス計算の前段階である微細組織のモデリングにおいて、従来の画像処理のみではモデリングが困難であることが判明した。そのため、深層学習を用いたセグメンテーション法を開発し、新たなアプローチでモデリングに挑戦する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、3次元磁区および微細組織の測定実験が想定より順調に進展したためである。次年度は、実験データの解析とマイクロマグネティクス計算の推進に向けて、計算機購入費と共同研究先滞在費として使用することを計画している。
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