2023 Fiscal Year Research-status Report
Long-term change in the summer North Pacific driven by the North Pacific Subtropical High and its impact on marine heat waves.
Project/Area Number |
23KJ0198
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西平 楽 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 海洋熱波 / モード水 / 太平洋高気圧 |
Outline of Annual Research Achievements |
夏季北太平洋における太平洋高気圧の強度変化と、海洋熱波の発生要因との関係を調査するため、採用初年度では、特に顕著な海洋熱波が発生した2021年夏季を対象に、観測データを用いて解析を実施した。 大気再解析データを用いた過去80年の統計解析から、2021年夏季において、太平洋高気圧の特異的な強化並びに西方への拡張を見出した。上空の大気場の変化は海面での熱交換を通して海水温に影響を与えると考えられる。そこで、海洋混合層内の熱収支解析を行うことで、海洋熱波に対する大気と海洋の寄与を定量的に評価した。その結果、大気すなわち太平洋高気圧の変化に対応する風や放射の寄与のみでは、記録的な海洋熱波を引き起こすに至らないことが判明した。 続いて、海洋内部からの海洋熱波発生への寄与を調査するため、無人観測網であるArgoプロファイリングフロートを用いた解析を実施した。その結果、海洋熱波の発生には、中央モード水とよばれる海洋亜表層に存在する鉛直一様な層の欠如が関係していることを示唆する結果を見出した。従来の海洋熱波の発生原因に関する研究は主に大気強制に焦点を当てたものが多く、海洋内部のモード水の層厚変化に焦点を当てる試みは画期的であるといえる。この結果については国際学会で発表したことに加え、現在国際学術誌に投稿し、改訂作業中である。加えて申請者は3月末よりハワイ大学マノア校に滞在し、黒潮と気候変動との関係や10年規模変動を専門とする世界最先端の研究者らとともに、北太平洋における水温上昇の要因および海洋熱波への影響について議論を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では採用初年度に太平洋高気圧の強度変化による海洋熱波発生への寄与を明らかにし、結果を論文にまとめることを目指した。大気に加え海洋内部からの影響を示唆する新たな観点からの結果も得られ、論文の改訂作業も進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
北太平洋における海洋熱波を調査する予備解析で、北太平洋の特に水温前線域において長期的な水温上昇が顕著であることも明らかになった。これにより、海洋熱波の発生頻度も大幅に増加することが懸念される。今後は長期的な水温上昇の要因と今後の見通しについて、データ解析と数値モデルを用いて調査する方針である。申請者は3月末より来年度10月までの半年間、ハワイ大学マノア校に滞在中である。滞在中は、黒潮と気候変動との関係や10年規模変動を専門とする世界最先端の研究者らとともに、水温前線域での長期にわたる水温上昇の要因および海洋熱波への影響について議論を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は想定より物品費用や論文掲載料が発生しなかったことが原因として挙げられるが、次年度は学会への交通費に加え、オープンアクセスにかかる費用やハードディスクなどの費用に充てる方針である。
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