2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the effects of volcanic outgassing and variations in solar UV intensity on Venusian climate
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23KJ0201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
狩生 宏喜 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 金星 / 雲 / エアロゾル / 微物理 / 気候 / 循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
金星の硫酸雲の維持生成過程の解明は、その気候を理解する上で欠かせない要素である。2023年度、金星の雲構造を再現する目的で、1次元の微物理モデルの開発が進められた。このモデルは、計算コストと精度の異なる二つのスキーム(Bin法とモーメント法)を使用して開発された。Bin法は高い計算コストを要するものの、微物理計算の精度は高い。一方、モーメント法は計算コストが低いが、その精度は劣る。そこで、モーメント法の計算精度を担保するため両者の結果を観測と比較した。その結果、両者とも観測結果を概ね再現することが確認され、Moment法の有用性を確かめることができた。 さらに、Bin法によるモデルは先行研究をさらに発展させ、高高度領域でのエアロゾルプロファイルを得ることができるようになった。また、これまで困難とされていた水蒸気、硫酸蒸気、エアロゾルの観測プロファイルを同時に再現した。そして、渦拡散係数に関するパラメータスタディを実施することによって、大気循環の強度を制約することに成功した。さらに、温度条件についてのパラメータスタディも行い、Venus Expressによる観測で確認された水蒸気プロファイルが、エアロゾルの蒸発によって引き起こされる可能性を明らかにした。これらの成果は、金星の大気と気候の複雑な挙動を解明する上で重要な一歩となった。この結果は、査読つき国際論文誌Planetary Science Journalで出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金星設定において、今まで一次元以上で検証されたこなかったMoment法の有用性を、Bin法の結果と比べることで確かめることができたため。そして、開発された一次元微物理モデルを用いて、エアロゾルプロファイルの維持に必要な循環強度を制約することができたため。 また、次のステップである化学過程の実装も見通しが経っているため、計画を予定通り遂行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は金星大気の光化学モデルを開発し、雲微物理モデルにその光化学モデルの実装を行う予定である。これにより、SO2やH2Oの変動が雲生成率に与える影響を直接計算できるようになる。それにより、観測されたSO2混合比変動と計算されたSO2プロファイルを比べ、金星気候の変動要因について検証することが可能になる。
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Causes of Carryover |
今年度は2つの海外学会に参加する予定だったが、円安の関係で学会参加費が高騰し、1つの海外学会にしか参加することができなかった。その結果、金額に余剰分が発生した。 次年度も円安が続くことが予想されるため、今回生じた余剰分は海外学会の参加費などに使用する予定である。
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