2023 Fiscal Year Research-status Report
界面制御に基づくナノコアシェル型正極の創成と室温動作型新規マグネシウム蓄電池開発
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23KJ0214
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯村 玲於奈 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | マグネシウム電池 / 正極材料 / ナノ粒子 / 界面制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、室温動作型マグネシウム蓄電池正極の高性能化に向けて高電位作動・高放電容量・高サイクル性をクリアする材料開発を目指している。高出力化に向けた研究では、アルコールを用いた新規溶液プロセスにより10nm以下の一次粒子を持ったα-MnO2の開発に成功し、従来の材料と比べて、室温で高電位かつ高容量を示すことがわかった。これは、極小ナノ粒子化により、固体内を移動するMgイオンの距離が大幅に減少したため、室温でも十分に動作するようになったためである。しかしながら、正極/電解液界面で電解液の酸化・還元分解などの副反応が起こることや、Mgイオンがトンネル構造内にトラップされることで充電過程でのMgイオン脱離反応が進行しにくいという影響があり、サイクル特性は約10サイクルにとどまることが明らかになった。 今年度後期には、α-MnO2の結晶学的可逆性における課題を踏まえて、より堅固な構造を持つ正六角形のトンネル構造を有するh-MoO3という材料に着目した。そして、ボールミルを用いたトップダウン方式のナノ粒子化操作を経て、正極動作試験を行ったところ高いサイクル特性を示すことが明らかとなった。さらに、充放電前後の正極結晶構造解析より、Mgイオンの脱挿入反応に伴い、正極の結晶構造が可逆的に変化していることがわかった。 以上の研究によりでは高出力化と高サイクル特性を持つ材料を独立して開発することに成功し、本研究の目指す高性能正極材料の開発に向けて大きく前進したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、室温で高出力化と高サイクル特性を示す材料群の探索に成功しており、酸化物を用いた高性能Mg電池正極材料開発に向けた要素技術を蓄えることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き高出力化と高サイクル特性を示す材料群の探索を進めつつ、溶液プロセスを用いてそれらの材料を使った正極界面制御を行うことで高性能正極材料の開発を目指す。さらに、放射光実験や第一原理計算を用いた構造解析により正極材料の動作原理を明らかにする。
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Causes of Carryover |
カールスルーエ工科大学にて長期に渡り研究を行っていたため、支出額が予定より少なかった。繰越した分を用いて次年度は北海道大学での実験、放射光施設での実験、物品購入などの費用に充てる予定である。
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