2023 Fiscal Year Research-status Report
Unveiling the genetic mechanisms driving the convergent evolution of caudex plants in Cucurbitaceae for applications to breeding
Project/Area Number |
23KJ0235
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鴫田 玄太郎 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | ウリ科 / コーデックス / ゲノム / フローサイトメトリー / ナノポア / 収斂進化 / 適応進化 / 乾燥耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はウリ科コーデックスの収斂進化を駆動した遺伝的メカニズムを,ゲノムおよびトランスクリプトーム情報の種間多重比較により解明し,それをウリ科作物の乾燥耐性の向上へ応用することを目的としている.今年度は,植物材料の取得可能性の観点から,研究代表者がドイツのミュンヘン工科大学に客員研究員として滞在し,以下の2項目を実施した. 1.ウリ科コーデックスのゲノムサイズの測定 メロンやスイカといった作物を除くウリ科植物の多くは,ゲノムサイズや染色体数・倍数性といった遺伝学的研究を行う上で必須の基盤情報すら全くの未知である.そこで,コーデックスを中心とするウリ科植物50種以上の種子または実生をドイツ国内および近隣諸国の種苗会社から取得し,フローサイトメトリーによりそれらのゲノムサイズを測定した.その結果,6倍を超えるゲノムサイズの多様性(約300 Mb~2 Gb)が明らかとなった.また,単一の属内でも著しいゲノムサイズの違いが認められ,それらの属は倍数体を含むと考えられた. 2.収斂進化したウリ科コーデックスのゲノム解読 種間の系統関係および地理的分布をもとに,収斂進化したと考えられる計7種のウリ科コーデックスを選定し,DNA配列の長鎖解読が可能なナノポアシーケンサーを用いて,ゲノム配列の構築に必要な配列情報を取得した.うち1種については,他の6種に先行して解析を進め,ドラフトゲノム配列の構築と遺伝子アノテーションを完了した.これを既報のウリ科植物23種のゲノム情報と比較することで,本種に特有の遺伝子群を発見したほか,本種では近縁種との種分化後に特定のトランスポゾンファミリーのコピー数が急激に増加したことが明らかとなり,コーデックスの進化メカニズムに関する洞察を得た.この成果について,2024年7月にスペインにて開催される国際学会での発表が決定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
植物材料の取得および生育に予想以上の期間を要したため,研究開始当初に予定していた以下の2項目を今年度中に遂行できなかったことから,「やや遅れている」とした. 1.根端細胞の顕微鏡観察によるウリ科コーデックスの染色体数・倍数性の決定 2.ナノポアシーケンスデータの欠点である一塩基レベルの解読精度の低さを補完するための,ショートリードシーケンスデータの取得
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Strategy for Future Research Activity |
<次年度> 「現在までの進捗状況」に記載した,今年度中に遂行できなかった2項目について,サンプル数を絞って速やかに遂行する.また,先行して解析を進めている1種以外の6種についてもゲノム配列の構築を進め,これらのゲノムに共通するパターンを探索することで,コーデックス化に関連するゲノム領域を推定する.加えて,葉,茎,根の組織別トランスクリプトームシーケンスを実施し,構築したゲノム配列を参照配列として,全遺伝子の組織別発現アトラスを取得する.これらのマルチオミクス情報の比較解析により,ウリ科におけるコーデックスの収斂進化を駆動した遺伝的メカニズムを解明し,コーデックス化の鍵となる遺伝子の候補を絞り込む. <最終年度> コーデックス化を引き起こす候補遺伝子の機能について,CRISPR-Cas9技術を利用したゲノム編集により検証する.具体的には,標的遺伝子の機能を喪失させたメロン変異体をin planta particle bombardment法により作出し,これを管理温室内にて5段階の異なる灌水条件下で栽培し,変異体がコーデックス化するか,乾燥耐性が向上するか,果実や他の形質への副次的な影響があるか等を評価することで,ウリ科作物育種への応用可能性を検証する.
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載の通り,ショートリードシーケンスデータの取得を今年度内に遂行できなかったため,次年度使用額が生じた.これについては,次年度前半に同目的のため使用する.
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