2023 Fiscal Year Research-status Report
A Unified Understanding of the Cold Dark Matter Paradox and Beyond
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23KJ0280
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金田 優香 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | galaxies / dark matter / galaxy evolution / galaxy structure / galaxtic dynamics |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終ゴールであるコールドダークマターモデルによる理論予言と観測との間の小スケールでの矛盾の解決に向け、該当年度は、その一つであるミッシングサテライト問題に注目した。 ミッシングサテライト問題とは、銀河サイズでコールドダークマターによる宇宙論的N体シミュレーションが予言する衛星ハローの数が、観測される衛星銀河の数を上回る問題である。解決策として、銀河の形成が抑制されたほぼダークマターのみの衛星ハロー(ダークサテライト)の存在を提案するものがある。ダークサテライトpopulation の調査は、ダークマターの性質を知るための重要な手掛かりとなる。 一方で、M31 は銀河系に最も近い大質量円盤銀河であり、そのステラーハローには銀河衝突の痕跡が多数観測されている。中でもStream C と Stream D はユニークな特徴を持ち、天球面上で互いに平行、奥行方向の距離も近く、幅は同程度、金属量も等しい。これらの形成モデルは未だ提案されていない。我々はその形成過程を初めて、「元々単一であったステラーストリームに他天体の衝突による摂動が加えられることにより二つに分裂する」と仮説した。Stream C、D 周辺に他の構造がないことより、摂動因子はダークサテライトの可能性が高い。解析モデルによって、ホストポテンシャルの効果により軌道が初期状態より内側に散乱された粒子と外側に散乱された粒子の間に軌道運動の位相差が生まれ、それが成長することによりストリームが二つに分かれるとわかった。また、この影響は摂動因子の大きさ、相対速度に依存し、質量依存性が最も強く、ストリームと同等から一桁重い程度の質量範囲のみで分裂を起こすことがわかった。加えて、ストリームと摂動因子をN体としたシミュレーションにより、より現実的な状況でもストリームが分裂することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
該当年度は、最終的な宇宙論的流体シミュレーションを用いた研究をするための第一段階として、スレッドおよびプロセス並列化されたN体シミュレーションを用いて研究を行うことに成功した。この結果について、国際会議で4件(うち口頭発表4件)、国内会議で5件(うち口頭発表3件)発表を行うことができた。 一方で、第一段階の研究に、予定されるより時間をかけてしまったと言える。この理由として、シミュレーションの結果で得られた物理に対する理解を深めるための解析モデルの作成に時間をかけたことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、該当度の研究内容を論文にまとめて発表する。 第二に、次年度はカスプ-コア問題に注目する。一度の星形成による瞬間的SNフィードバックでは、カスプ-コア遷移を起こせないことが明らかになっている(Ogiya & Mori, 2011)。一方でOgiya & Mori (2014) において、超新星爆発が周期的に発生することを考慮すると、カスプ-コア遷移が起こることが示された。しかしながら、このモデルはバリオンポテンシャルの変動に理想的な仮定をおいて得られた結果であり、現実的な星形成モデルや宇宙論的効果を考慮して検証する必要がある。進捗状況を鑑み、元々予定していた独自コード開発を行う代わりに、次案として提案していた汎用コードを使用する方針への転換を決定した。汎用コード Swift を利用し、銀河形成入りの宇宙論的流体シミュレーションを行う。計算には、筑波大学計算科学研究センター学際共同利用のスーパーコンピュータCygnus、Pegasus、Wisteria-Oを使用する。シミュレーションで形成されたダークマターハローとOgiya-Moriモデルの予測とが一致するかを調べることにより、Ogiya-Moriモデルの妥当性を検証する。加えて、シミュレーションで得られた星形成史、ダークマター質量密度分布の中心部の冪・コア半径と、観測との比較を行う。
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Causes of Carryover |
本研究では、バリオンポテンシャルの変動に理想的な仮定をした数値実験の結果である Ogiya-Mori モデルの妥当性を調査するため、より現実的な星形成モデルや宇宙論的効果を考慮して検証を行う。具体的には、汎用コード Swift を用いて銀河形成入りの宇宙論的流体シミュレーションを行う。次年度は、シミュレーションで形成されたダークマターハローとOgiya-Moriモデルの予測とが一致するかを調べることにより、このモデルの妥当性を検証する。加えて、シミュレーションで得られた星形成史、ダークマター質量密度分布の中心部の冪・コア半径と、観測との比較を行う。計算には、筑波大学計算科学研究センター学際共同利用のスーパーコンピュータCygnus、Pegasus、Wisteria-Oを使用する。ただし、テスト計算や結果の解析には手元の計算機を用いるため、高速な計算のできる計算機を購入する必要がある。当計算機を当該年度に購入予定であったが次年度にまわしたため、次年度使用額が生じた。計算機は次年度に購入予定である。
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