2023 Fiscal Year Research-status Report
環状超分子集合体を利用した量子ドットの分散・配列制御による新規発光ナノシステム
Project/Area Number |
23KJ0314
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
須田 奈月 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 自己集合 / ナノリング / 発光 / 構造転移 / ナノファイバー / アゾベンゼン / ベンゾチアジアゾール |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、分子の自己集合により形成されるリング状集合体と多様な発光色を示すナノ粒子の包摂現象を基軸として、ナノ粒子の分散および集合を制御しうる新たなナノサイエンスの展開を目的としている。本年度は、すでにリング状集合体を形成することが判明しているアゾベンゼン二量体分子の自己集合挙動を精査した。原子間力顕微鏡・分光測定から自発的にリング状集合体から繊維状集合体へ転移することを見出した。繊維状集合体を断片化したシードを用いることで、この構造転移現象を著しく促進できることも判明した。さらに、動的光散乱法・小角X線散乱測定によって、リング状集合体は高濃度溶液条件下においても安定して形成できることが明らかとなった。高濃度リング状集合体溶液から繊維状集合体への構造転移を利用して、ゲルの形成も達成した。 この成果に加えて、最近では、ベンゾチアジアゾール骨格を有する分子を新規に合成し、その自己集合挙動を調査した。その結果、この分子もリング状集合体を形成し、高い蛍光量子収率を示すことも判明した。このリング状集合体は、集合体形成直後は不揃いな直径をもつリング構造であったが、時間発展的に沈殿を析出しながら均一な直径のリングへと構造が収束していくことが原子間力顕微鏡観察から明らかになった。さらに、オキサジアゾール、セレナジアゾール骨格を有する分子も合成し、カルコゲン元素の差異が集合体形成に及ぼす影響を現在調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、リング状集合体から繊維状集合体へと構造転移するアゾベンゼン分子を利用して、ゲルの形成を見出した。このゲル形成を光により制御できれば、ナノスケールからマクロスケールにかけての集積制御を達成できるとも考えられる。また、ベンゾチアジアゾール分子による発光性のリング状集合体を得ることもできており、量子ドット(QD)と混ぜ合わせることでQDだけでなく集合体由来の発光も調整しうると考えられる。したがって、本年度の研究は順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、得られたリング状集合体とQDの共集合を試みる。アゾベンゼン分子によるリング状集合体では、光による集合構造の変化によりQDの分散・配列を制御する。原子間力顕微鏡観察および透過型電子顕微鏡から、QDが集合体に吸着する様子を観察する。集合体に対してQDが吸着すれば、その配列に応じたQDの発光特性が見られると予想できる。また、新規に設計したベンゾチアジアゾール分子においては、スペクトル測定および原子間力顕微鏡観察を用いて、リング状集合体の時間発展挙動を精査する。さらに、発光性のリング状集合体とQDを共集合させ発光色チューニングを試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は、分光器用消耗品等を予算として計上していたが、既に使用していた光源を交換することなく本年度を終えたため、予定より予算を使用せず次年度使用額が生じた。 次年度は、環状超分子集合体とQDによる共集合実験を実施する。QDのサイズ選択的な環状超分子集合体との包摂体形成および、これらの基板上への2次元配列により、発光性薄膜への展開を試みる。そのために、分光測定や顕微鏡観察を中心に実験を行う。したがって、研究経費としては分光器用消耗品、AFM観察用カンチレバー、AFM観察用グラファイト基板の購入費用を計上する。また、学術論文投稿および学会での発表を行うための費用も計上する。すでに、次年度に国際学会で発表することが決定しており、渡航費・宿泊費が高額になることが判明しているので、本年度の繰越額を旅費の予算としても計上する。
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