2023 Fiscal Year Research-status Report
The Ottoman Counterinsurgency and Violence
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23KJ0342
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永島 育 東京大学, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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Keywords | 東洋史 / 近代史 / 軍事史 / オスマン帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度の目標は、オスマン帝国陸軍について研究するための基盤を構築することであっ た。この目標に基づき、夏にトルコ共和国アンカラの国防省文書館、陸軍士官学校文書館での研究を申請し、前者については許可を得てその成果は永島 育「はじめて日本語を学んだ土耳其軍人」日本トルコ交流協会講演会(東京大学東洋文化研究所)2023年11月11日に結実したが、後者については陸軍からの許可を得ることが出来なかった。しかし陸軍士官学校文書館員との協力関係を構築できたため、来年度には同文書館を利用できる可能性がある。 通常のオスマン帝国史研究者が訪れる文書館(オスマン文書館)での調査は問題なく行え、取得した史料の分析に集中し、一部成果についてはNagashima, Iku, From Loyalty to Merit: Changes in Military Uniforms and Self-Images of Ottoman Young Officers on the Eve of the Young Turk Revolution,Turkologentag 2023 (Vienna), 22/9/2023で公表できた。なお、陸軍を研究する際には将校が残した回想録等の自分語り史料の利用が必須だが、その分析手法についての検討は永島 育「回想録」東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室HP内「オスマン帝国史料解題」2023年5月に結実した。また、軍事史において兵器について深く理解することが必要だが、これに関する分析はNagashima, Iku, A Preliminary to a Comparative Study of Turkish and JapaneseArchery, Workshop: Military Elites in the Early Modern Islamicate World and Beyond(The University of Tokyo), 20/1/2024で成果を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度には、すでに研究実績の概要で触れたようにトルコ(アンカラ)での文書館調査により史料を得られただけでなく、これまで日本人の研究者が利用してこなかった国防省文書館とのコンタクトを得ることに成功した。同文書館が持つ史料は、今後、オスマン帝国軍事史の研究を進める上で必要不可欠な基礎史料である。従って同文書館の件については、今年度の特筆すべき成果と言える。ただし、同じくアンカラにある文書館のうち、やはり日本人研究者が利用してこなかった陸軍士官学校文書館については、年度内での利用に至らなかった。このため、史料調査の点ではおおむね順調と評価した。 研究成果の公表については、ウィーンでの国際会議参加をはじめ、英語を含む3回の報告を行い、また今後の研究において幾度も参照することになる史料の利用方法について文章化することが出来た点は、順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度の課題は、前年度の路線を質を高めて継続することにある。前年度はあくまで試験的な利用にとどまった国防省文書館であるが、今年度はより多くの史料を請求・確保し、昨年度に同文書館で得た史料をもとに行った報告に増補して論文化する必要がある。また、陸軍士官学校文書館については、今年度に初回利用へ至るのが理想である。 ところで本研究の目標は、オスマン陸軍の行った治安維持と民衆への暴力について分析することにある。昨年度は軍事史研究の基礎を構築するのに費やしたが、今年度はより発展的な問題について史料を収集して分析の上で論文化し、来年度の目標としている書籍化へのステップとする必要がある。また研究成果公開に関連して、昨年度に引き続き、外国語での報告も積極的に行っていく。 また今年度は、文書館での調査に加えて、トルコ国内、バルカン諸国における実地の見学も行い、現場の気候や輸送路に関する知識が必要不可欠な地理や地誌について見聞を深めたい。
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Causes of Carryover |
令和5年度の海外出張では、史料調査地であるアンカラから国際学会開催地であるウィーンまで、さらにウィーンから日本までの旅費、そしてウィーンでの滞在費を他科研費から支出したため、繰越金が発生した。
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